ある日の午後、コルセットを着けた叔母がぼそりとつぶやいた。

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『何にも出来ないさぁ、へぇっへぇっ~w』

ワタシの親父の姉にあたる叔母は

玄関先でその言葉を笑顔で発したのだった。

いつも優しい叔母だ。

一度だって怒られた経験はない。

その代わり、

昔のこと、花城家のルーツなどワタシが生まれ育った地の

当時の風景や人々の在り方などを時々話してくれた。

口癖はいつもこうだ。

『そうだよ~タケシぃ、そうなんだよ~。へぇっへぇ~w』

いつだって優しい叔母。

この、そうだよ~というイントネーションが潤いの無い

ワタシの乾いた心を癒してくれるのだ。

その叔母が玄関先で胸の下から腰まで

おおげさなコルセットをまといながらお中元を持ったワタシを出迎えた時

どうしてそうなったのか?の理由を尋ねると

自宅内で滑ってしりもちを突き、

尾てい骨あたりを骨折したとのこと。

その大袈裟なコルセットは

痛さからくる前かがみになる姿勢の矯正のための

補装具だとの事。

高齢者の転倒事故は自宅内で起きる事も多く、

その一回の転倒から入院となり、

下半身の筋力が急速に弱まり、車いす生活を余儀なくされるパターンを

いくつも見てきた。

幸い、ワタシの叔母はよちよち歩きでw自力の歩行も可能だが

そのバカでかいコルセットを見た時何とも切なくなったものだ。

『何にもできないさぁ。。。。。』

この悲しそうなつぶやきを

介護タクシーのお客様からも何度となく聞いてきた。

今まで普通にこなせた歩行や、重いものを持ち上げる、

冷蔵庫からお茶とフルーツを取り出しお客のいるテーブルまで

運ぶなどの健常者なら誰もが当たり前にできる動作が

出来なくなってくる、出来にくい体となってくる。

若い時のままの気持ちと

それと反比例して老いていく身体。

そのギャップをどう受け入れていくのか。

ワタシの前では泣き言なんて一つも言わない叔母。

その状況になっても、

これはこれでしょうがないさ、と諦観する様と、

その現実の狭間で交錯するであろう入り混じった複数の感情が

ぶつかりあっていると思われる。

もともとネガティブなワタシ。

アトピーと言う皮膚の病をまといながら

日々の仕事をこなしていく中で

ふと目に留まるジュクジュクとした皮膚を見るにつけ

がっくりとくる事は30数年の月日を得ても

変わらないもの。

ワタシがそんな叔母から学ぶことは

自分の置かれた状況が苦しくとも悲しくとも

他者に対して笑って語れる気持ちを持つこと。

少しでも持とうという前向きな姿勢。

本人の気持ちなんてものは

他人が推し量れることはそう簡単ではないだろう。

雑談を交わし、又、ユンタク(おしゃべり)しに来るよ~と

叔母の手を握ったときの

予想以上の握力の強さに

ワタシはどきりとさせられたのだった。

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花城 健

合同会社 代表社員兼 介護タクシーめぐり運転手  1978年 沖縄県・金武町生まれ   旅行をあきらめる障がい者・歩行に不安のある高齢者へ沖縄観光の成功を一緒に考え、現地ならではの情報提供を行い、ゆったり・ゆっくりの小旅行を企画する日本で数少ない駆け込み寺型の福祉・介護タクシードライバーでもある。 良質な情報に触れ・多少の不便を受け入れ・体験したいコトを明確にすれば、障がい者高齢者の旅行は必ず叶えられると確信しています。 THE  YELLOW MONKEYをこよなく愛す。 趣味・三線 読書 一人カラオケ ジムニ―イジり 落語・歌舞伎鑑賞 ウィングスーツ滑空妄想 資格: ヘルパー2級・視覚障害、身体障害者ガイドヘルパー・認知症サポーター・実務者研修(痰吸引・経管栄養)・手話3級・運行管理者(旅客)  実績事業: 障がい者外出の移動支援事業、高齢者通院支援事業を自治体より委託契約 身体障がい者福祉協会・会員の福祉向上送迎事業受託 発達障がい児通学送迎事業受託
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