沖縄ならではの青い空、緑豊かなやんばるの大自然、美味しい料理に温かくて心優しい人々とのふれあいが観光/旅行を充実させるわけですが、沖縄特有の環境と高齢者ならではの特性をふまえて準備しておかないと、ストレスと疲れが溜まる残念な時間を過ごすことになるかもしれません。
この記事は、沖縄生まれ育ちで介護タクシー乗務員歴18年の経験をもとにお伝えする、たいへんおせっかいな提言です。
あまり語られない:高齢者(シニア)との沖縄観光でストレスと疲れがたまる理由
70代以降の高齢者は歩行がツラくて遅くなるから
TVで放映される高齢者が階段を駆け上がったり100m走をこなしている様子を目の当たりにしますが、現実問題、そのような高齢者は2割にも満たないでしょう。
人は必ず老います。健康に気を付けて運動を頑張っても屋内外で転倒してしまったり、過度な外出制限を強いられたせいで筋力が弱まり、数十メートルの歩行もままならなくなったりします。
沖縄に限りませんが、各所の文化・歴史・自然・体験・食を100%楽しむためには、段差/階段/傾斜をクリアできる健脚が求められますよね。
足元が不自由になるとご案内できる場所が狭まるほか、観光地をまわる時間がかかって予定時間をオーバーしてしまったり行きたかった場所を諦めてしまうことも珍しくありません。
乗用車がないとアクセスしづらい・観光地が広いから
鉄道が充実していない沖縄での観光は、乗用車がなければ仕事もプライベートもままなりません。那覇空港を起点としたゆいレールも、令和6年7月時点において那覇市・浦添市までしか開通していません。
車でアクセスすることを前提に設計されてきた街のデザインに後付けで鉄軌道を整備し続けていますからね。本島北部やんばるまでの開通も15年先くらいでしょうし。
首里城公園も美ら海水族館もデポアイランドも敷地が広いため、歩行力に難のある高齢者にはツラい思いをさせてしまうことも。
このあたりの感覚は、普通に歩けて階段を上ったり段差を乗り越えられる健常者には共感されづらいポイントです。
現場のバリアフリーを知らない人たちがバリアフリーだとPRしているから
障害者高齢者と一緒に初めて訪れる土地への観光旅行では、誰もがネット検索をして現地のバリアフリー情報を調べるはずです。
ですが宿泊ホテルや観光地の公式サイトが積極的かつ当事者目線のバリアフリー情報を発信できていないほか、手すり付きトイレの場所・観光地のバリアフリールートと車いすアクセシブルな飲食店が事前に把握できないので、モヤっとした不安がぬぐえないままです。
移動時間が長いから
この部分は観光介護タクシーを展開する弊社も内省すべき点です。どんなに美しいオーシャンビューも赤瓦があしらわれた琉球家屋立ち並ぶ市街地も、60分以上クルマのなかで揺られつづけると飽きるし疲れます。
那覇空港およびクルーズ船が寄港する那覇港から美ら海水族館まで高速道路経由でも片道100分以上かかります。この、移動時間に対する精神的かつ肉体的なロスを少しでも解消するためには、高齢者目線のヒアリングと移動時間を極力おさえた観光プランニング力が求められます。
余談ですが、沖縄本島北部にもう一つの空港があると、障害者高齢者への移動の負担が軽減され、観光地ひとつひとつをゆっくり楽しめるようになるはずです。誰か創ってくれぃ。
レンタカーの運転に不安があるから
高齢者ご本人や家族が長らく運転をしていないペーパードライバーだったり、土地勘のない場所で万が一事故を起こしてしまったら…という移動手段に対する不安が、観光旅行への足を遠のかせています。現地での運転も相当なストレスがかかっているはずですね。
令和5年ユニバーサルツーリズムに対するお客様の声
障害者高齢者への観光サービスを提供する事業者にとって喉から手が出るほどほしい、お客様の声アンケート資料をご覧いただきたいのですが、かなり膨大でした。
【PDF資料】ユニバーサルツーリズムに関する調査業務 報告書 令和5年3月 国土交通省観光庁観光産業課
なので、独断と偏見で一部抜粋してみました。
●多目的トイレの位置を分かりやすいように案内してほしい
●割引などの金銭的支援があればよい
●店舗の入り口・トイレ・客室・風呂などの段差をなくしてほしい
●移動時間が短ければまた行きたい
●交通機関の乗降のしやすさを求めたい
●移動に不安があるため旅行に行けない
利用者の不満や不安の声を解消するためにはバリアフリーな人材を育成するための膨大な時間と設備へのお金が必要です。どの業界も人出不足でキャッシュが潤っているわけでもありませんから、ユニバーサル環境整備は優先順位として低くならざるを得ない。
ですが、放置し続けていいわけでもないのです。
足元が不自由な高齢者がストレスフリーで沖縄観光を満喫するなら
それには2つの手段しかないと考えています。
なるべくお金をかけない方法
車椅子と福祉車両のレンタカー・もしくは普通乗用車タイプのレンタカーを借りて楽しみたい観光地を1日/2つまでにしぼって、体力と運転に自信のある人をお供につけて時間をかけてゆっくり回る方法です。これなら、車椅子介助に慣れていない家族でも焦らず急がず観光地での体験や買い物を楽しめるでしょう。
道に迷ったり手すり付きトイレやバリアフリールートを探す時間や、車いす介助にともなう労力のデメリットはどうしても避けられませんが、家族だけ・気心知れた仲間だけで回れる安心感があります。
お金をかける方法
宣伝になりますが、観光介護タクシーを活用することです。
現地を走り回ってバリアフリー観光地の開拓とリサーチに余念がない乗務員だからこその説得力ある情報は、ストレスフリーで観光を楽しむために欠かせない要素です。
観光地内外の車いす介助も行いますし、専用車両の乗降のしやすさをいったん味わうと、障害者高齢者ご本人と家族の表情が晴れやかに変わります。
レンタカー以上のお金はかかりますが、【旅先で悩まず・疲れず・安全に、体験と食と買い物を楽しむことだけに専念できる】価値と捉えて頂ければ幸いです。
余談ですが、タクシー乗務員それぞれの個性(接客)も、旅行や観光の満足度に関わるポイントだと考えています。
まとめ
旅行観光はなるべくお金を節約して安全と快適と感動を味わいたい…!という欲求は誰しもが持ち合わせています。土地勘のない旅先での安心安全な移動は、自動運転のシステムも法整備も行き届いていない以上、現地で働く人間の運転と労力にゆだねるほかありません。
頼れる人と便利なクルマが確保できなければ、ぜひ、観光介護タクシーを活用してください。美味しいところもいっぱい知っていますよ(笑)!