先日Facebookのタイムラインに、株式会社クーリエが運営する介護情報コミュニティサイト「みんなの介護」の、
【知ると得する】介護タクシー活用術の動画が流れてきました。
介護タクシー事業者側も、これから利用するであろう見込み客のために、
●介護タクシーとは?
●介護タクシーの料金とは?
●どんな時に使える?
これらの情報を、わかりやすく丁寧に伝え続けなければなりません。
そのような中で、介護情報のひとつに介護タクシーを取り上げてくださったことは大変ありがたいのですが、14年間お客様をお運びしてきた経験から疑問を抱く発信がいくつか見受けられました。
いままで介護タクシーを利用したことがない人が、上記の動画の内容すべてが正しいと認識されると、介護タクシー事業者もお客様も不利益をこうむります。
僭越ながら、疑問点をいだいた箇所にツッコミをいれました。
【この記事でわかること】
●介護タクシー利用で、誤解を招きやすいポイントがわかる
●介護保険タクシーと介護タクシーと福祉タクシーの違いがわかる
この指摘にかんして、「そっち(介護タクシーめぐり)こそ間違っているぞ」というご意見ありましたら、お問合せフォームよりコメントくださいませ。
本質を突いたご指摘で、私の誤認識/勉強不足と判断すれば、修正・追記のうえ正しい情報発信に務めます。
みんなの介護:動画【知ると得する】介護タクシー活用術へツッコミ…のまえに
まず、この、「みんなの介護」さんが動画で発信されている内容の大部分が、「介護保険タクシーありきで」説明されています。
※介護保険介護タクシーとも呼ばれます
まるで、全国で活躍中の介護タクシーが、介護保険タクシーであるかのような印象を与える発信です。
これがまずいです。
全国には、介護保険サービスの枠にとらわれずにケアマネージャーにケアプランを立ててもらわなくても、自由度高いタクシーサービスでお客様に支持されている介護タクシー事業者もたくさんいるんですから。
解説していきます。
①視聴時間1:16から 「介護タクシーとは介護保険制度の訪問介護の『通院等の乗降介助」というサービス に対して
動画では、
と説明されていますが、半分正解で・半分間違いです。
なぜなら、全国で活躍する介護タクシー事業者は、訪問介護サービスを提供するために必要な〝法人格〟を持っているわけでなく、ほとんどが個人事業者だからです。
正確に数えてませんが、全国のおよそ8割の介護タクシーが個人事業者だと思われます。
その理由も、法人を立ち上げるより個人事業者の形態の方が、資金も手間も人を雇う必要もなく、一人一台で開業できるからなんですね。
なので、「介護保険制度の…」という表現でひとくくりにされてしまうと、
とか、
とか、
という間違った認識になってしまいます。
私もふくめ、介護保険ルールにとらわれずに自由な外出サービスを提供している介護タクシー事業者が殆どなのですからね。
①に対しての補足情報
仰る通りですね、ややこしくさせてスイマセン(苦笑)。
それについては、介護タクシーの成り立ちを軽く知ってほしいのですが、以下の3つの引用文を前提知識にしてもらえるとありがたいです。
介護保険法の見直しが進む中、介護報酬の新単価に「介護タクシー」の項目が設けられることとなった。介護タクシーとは、従来は特に規定されている名称ではないが、一般的には、タクシー会社が介護保険制度内で行う移送サービスを指している。
しかし、「介護タクシー」は介護保険が始まる当初は予測されていなかったため、「制度の想定外」として各市町村に委ねられた形になっていた。
タクシー会社の行う介護タクシーのはじまりは、ボランティアなどの移送サービスより少し遅く、1998 年、福岡県のタクシー会社、「メディス」がはじめた。ホームヘルパーの資格を取得したタクシードライバーが高齢者や障害者の外出をしたのが最初である。
ようするに、介護タクシーのパイオニア〝メディス〟が先駆けた新しい形のタクシーサービスに、全国のアーリーリタイアおじさん組が触発されたわけですね。
このように、介護タクシー起業熱にやられたおじさんたちが介護タクシーの成り立ちも知らないままに、「先行組が屋号の前後に介護タクシーの呼称を使っているからそんな感じでいいじゃん」という理由で介護タクシーの呼称が一般化されました。
見込み客に認識されやすい呼称を使う方が集客にもつながりやすいですし。
または、介護保険タクシーが儲かるからとゴリゴリPRしていた某協会のアドバイザーの言われるがままに名付けたとかですね。
長くなりましたが、
みんなの介護さんの動画①の発信に対しては、〝訪問介護の「通院等乗降介助ルール」にとらわれない、介護保険とまったく関係がない介護タクシーという呼称を使っている個人事業者は、全国にたくさんいますよ〟とお伝えしたいです。
②視聴時間1:25 「福祉タクシーとは」 という説明に対して
はい、
これ一番言うたらアカンやつです。
補足説明なしに言い切ってしまってはダメですね。
福祉タクシーの屋号で営業されている全国の事業者さんと乗務員は、介護職員初任者研修(旧・ヘルパー2級)の座学と実践講習を受けて資格取得されています。
当然、福祉タクシーの乗務員は、車椅子ユーザーの乗降介助を行いますし・食事介助もしますし・トイレの介助もお手伝いしますし・病室ベッドから車椅子への移乗介助もお手伝いします。
おそらく、みんなの介護さんが言及されている福祉タクシーへの概念は、ヘルパーの資格を持たないTOYOTAジャパンタクシーや日産NV200を運転する乗務員のことを指しているのでしょう。
この説明は、前述した〝介護保険制度の訪問介護サービスの通院等乗降介助を提供する〟 という前提で伝えているのでしょうけど、福祉タクシーの呼称を屋号にくっつけている事業者のほとんどは法人設立していない個人事業者です。
介護保険ルールに基づいた乗降介助は法人設立していないと提供できませんが、お客さんが運賃や介助料金を100%実費負担でお支払いいただけるのなら、個人事業主の福祉タクシー乗務員も乗降介助できるんですよ。
なぜなら、福祉タクシー乗務員も介護職員初任者研修を受けて資格取得していますし、プロの介護スキルを障害者高齢者に提供できるからです。
まとめると、福祉タクシー◯◯◯という呼称で営業されている乗務員は身体介助も行える方が多いので、予約時に車椅子介助を行ってくれるか確認してくださいね。
③視聴時間1:55~ 「介護タクシーの利用方法と利用目的」について
これも、介護保険サービスの対象者を前提にお話しされているので、100%同意できないんですね。
分かりやすく言うと、要介護1の認定を受けていない高齢者でも、誰かのサポートや寄り添いがなければ外出に不安がある方すべてが、乗客対象となります。
【介護タクシーを利用できる方・乗客対象者】
●要支援・要介護認定を受けた高齢者
●身体障碍者(車椅子/視覚/聴覚)
●精神障碍者
●発達障碍者・障害児
●透析患者
●骨折/その他の理由で公共交通機関を利用できない65歳未満
●自宅内から目的地まで、サポートがなければ外出できない方
過去に、左足を骨折した35歳の若者を病院から自宅までリクライニング車椅子で搬送しましたが、
介助に慣れた人で車椅子専用の福祉車両をもっていて事業許可もきちんと受けていて多彩な外出に応えられるって介護タクシーにしか成しえないんですよ。
要介護1以上の認定を受けていなくても、介護タクシーを利用できる場合がありますので、まずはお問合せくださいませ。
これも100%同意できません。
なぜなら、介護保険サービスをまったく無視した、「どんな外出目的にでも対応できる介護タクシー/福祉タクシー」は現実に、全国で活躍中だからです。私もその介護タクシーを経営しています。
たとえば、私が14年間お客さんに提供してきた外出用途は以下になります。
●コンビニ・スーパーでの買い物付き添い
●大型商業施設での映画鑑賞付き添い・買い物介助
●フェリーに乗って水納島で車椅子ユーザーと海水浴
●国政・地方選挙にかかわる期日前投票の付き添い介助
●初沖縄が新婚旅行の車椅子ユーザー旦那と奥様への貸切観光ドライブ
●診療所・クリニック・病院への通院送迎
●ストレッチャーで病院から病院への転院搬送
●透析送迎
●深夜2時、救急病院からの帰宅移動
●本土から大型フェリーで運航されてきた患者を県立病院へストレッチャー搬送
●年末年始・お盆に特別養護老人ホームから自宅へ一時帰宅送迎
●サービス付き高齢者住宅からお墓参り送迎
●早朝5:00迎えで那覇国際空港までお見送りタクシー
まだまだありますけど、このような多種多様にわたるタクシー送迎を行ってきました。
実費負担だからこそ、お客様の希望に100%沿うタクシーサービスが実現できるわけです。
④視聴時間4:07~ 「サービスを利用する際の4つの注意点」について
動画を見ると赤文字で強調されていますが、前述したように、介護保険のルールにとらわれない個人事業者の介護タクシーが全国で活躍中なのでこれも同意できません。
【間違った認識】
●介護タクシーを利用するなら、ケアマネージャーに相談しなければならない
【正しい認識】
●介護保険タクシーを利用するなら、ケアマネージャーと相談してケアプランを作成してから利用できる
●介護タクシーを利用するなら、「ググる・チラシ・ケアマネ」から連絡先を手に入れて、直接連絡してOK
●福祉タクシー利用も、事業者に直接問い合わせで予約できる
視聴時間4:22~ 「介護タクシーに家族は同乗できない」 について
現実と現場は、そのような理屈で通りませんし、家族は同乗してOK です。
むしろ、隣に家族が付き添っているとご本人も安心ですし、数か月数年ぶりの再会もざらにありますし、移動中のおしゃべりにも花が咲くってもんです。
介護タクシーが求められる理由って、こんな感じです。
◆自家用車では車椅子ごと乗車できないから
◆救急車を利用するほどの緊急性がないから
◆移動中の医療行為は必要ないから
◆家族が介護や家事で疲弊しているから
◆家族は介助なんてやったことがないから
上記の困ったニーズに応えられるスキルと設備があるから、介護タクシーは利用されているんです。
補足すると、家族が同乗しなくても患者単独で利用することもできます。
なぜなら、移動中の発作や体調不変は起きない…と判断されたからこそ、介護タクシーに依頼がまわってきます。
移動中にも医療的ケアが求められたり危険性が少しでもあるのなら、救急車や民間救急タクシーを利用するはずですから。
視聴時間4:37~ 「病院内における介助は原則として病院内の看護師などが対応し運転手は介助しない」について
はい、これも、現場の空気を感じていない発信です。
「原則として病院内における介助は看護師が対応する」はおっしゃる通りです。
ですが、コロナウィルスが蔓延するよりも以前から看護師不足が叫ばれていたことからも、介護タクシー乗務員が院内の介助をお手伝いしないと病院の経営がまわりませんし、ご家族の日常生活に支障がでてしまいます。
【介護タクシーめぐりが病院内でやってきたこと】
●身寄りのない乗客の院内付き添い介助
●ストレッチャー持ち込んで病室ベッドから移乗介助
●院内の車椅子移動
●トイレ介助
●総合窓口まで車椅子誘導
●ケアマネ/家族が到着するまで患者本人といっしょに待機
●夜間22:00にリクライニング車椅子を持ち込んで院内介助→介護施設まで搬送
まとめ
動画の大部分が介護保険タクシーについて説明されているので、
- 介護保険をつかわないけれど、介護タクシーの呼称をつかっている個人事業者さん
- ヘルパーの資格と介助スキルをもっている福祉タクシーの乗務員さん
- 実費負担であれば、どのような外出にも対応できる個人事業主の介護タクシーさん
これらの情報がほとんど伝わってきません。
大事なことなのでもう一度お伝えします。
私をふくめ、介護保険のルールにしばられない自由度高い外出や、貸し切り観光を提供している介護タクシー/福祉タクシーさんは全国にたくさんいます。
ケアマネージャーにケアプランを作ってもらわなくても、実費負担にご理解いただけるのなら、事業者に直接連絡ですぐ予約できます。
これから介護タクシーを利用する予定の方へお役立て情報となれば幸いでございます。
まずは、お近くの介護タクシー事業者さんへお問合せくださいね。