完全にやっちゃった感が否めない次世代タクシーと呼ばれるメイドインTOYOTAの
ジャパンタクシー。
世界のトヨタが2020年東京オリンピック・パラリンピックで世界各国から訪れる観光客・観覧者・テレビ番組スタッフ・健常者選手・障がい者選手らをターゲット(乗客)として、そして、介護タクシー以来の自由度の高い外出輸送機関・社会資源として
全ての人に便利で優しいタクシー
を謳って開発・設計されたものなのだが、
何故、このようにデザインがダサくて車椅子ユーザーにとっても乗務員にとっても扱いづらいであろう仕上がりとなったのか、誠に遺憾な思いでこのブログをつづってみようと思う。
尚、これは、障がい者・移動にお困りの高齢者のお客様を11年運び続けてきた介護タクシードライバーならではの視点で、頼まれてもいないのに書き込んでしまうという老婆心的ブログとなる。
ホワイ?何故に車椅子ユーザー乗降口を左側限定にしたのか?
左側通行の日本国内交通事情に合わせたのであろう、歩道からダイレクトに車内へアクセスする というのがウリなのかもしれないが、これは車椅子ユーザーがタクシーに求めている「行きたい所に・迎えてもらいたい場所に」の、ピンポイント輸送の価値を半減以下に押し込める残念な結果になってしまった。
例えば、車一台分しか通行できない極端に狭い道路脇に車椅子ユーザーを送り届ける/迎える際、タクシー乗降介助は大変に面倒なことになる。
また、タクシー乗務員という立場からみても、車いす乗降にかかる労力・時間が倍以上にのしかかってしまう車両設計となっているのだ。
それについてはこの動画をご覧いただければ。
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調べてみると、燃費向上に寄与する電気モーターとLPGガスのハイブリッドエンジン方式でどうしても必要なガスタンクが後部座席下にビルトインされているため、バックドア開口部からの乗降が不可能になってしまったようだ。
燃費向上(ランニングコスト)を優先して福祉目線を削いでしまったか。
車椅子乗降用のスロープは手動で毎回毎度取り出す?
ジャパンタクシーへの車いす乗降は、ドライバー自身が付属の補助スロープを設置して乗降を終えた後、車内に納めなければならない。
これも使い勝手が悪い。
健常者・障がい者問わず誰もが使いやすいユニバーサルデザインタクシーは車椅子ユーザーからの予約有り無しに関わらず、何時でも直ぐに車椅子乗降が行えるように整えていなければ、利便性が良いとは言えないだろう。
この補助スロープ方式は、2006年代辺りから運行している低床型路線バスと何ら変わらず、正直、その乗降のたびにスロープを車内から取り出して歩道から車内乗降口へ渡しかけて折りたたんで車内へ収納、、というプロセスは
ドライバーの身体的負担とストレスを小さく重ねていくという誠に遺憾な現実に突き付けられるだろう。
何より、利用する側の車椅子ユーザーの心苦しさを掻き立てる行為ともいえなくない。
どんなに笑顔で補助スロープ設置作業を振舞ったとしても、ドライバーから醸し出されるその身体的負担と精神的焦り・苛立ちを、障がい者らは敏感に感じ取っている。感じ取ってしまう。
ホスピタリティー溢れる接客を海外にPRするなら、メイドインジャパンが歴史の中で培ってきた「限られたスペースで最大の効果」を発揮する技術を、乗降スロープの自動・電動・効率化に活かせたのでは?
私の提案としては、左側スライド開口部から車椅子ユーザを乗降させるという事にこだわるのなら、
- 床下に格納される取り出し簡単な乗降スロープの設計・設置(助手席・裏の床下に)
- 車椅子ユーザーは乗降後、運転席後ろ側へ移動、床下に埋め込まれたターンテーブル式で視線をタクシー進行方向へ
- 乗降を終えたスロープは再び車内床下へ格納される
とにかく、介助するドライバーがめんどくさそうにしんどそうに乗降介助を行われるよりは、テクロノジー活用で利便性を高めてしまえば、ドライバー・車椅子ユーザーどちらともハッピーになれる映像が浮かび上がってこないだろうか。
車椅子固定装置が手動ベルト固定式であるためにタイムロス
助手席側サイドドアから手動でスロープを設置して車椅子ユーザーを左反転させ、運行中に車椅子がぐらつく事の無いように安全に移送するために固定せねばならないのだが、
ジャパンタクシーでは、この固定装置もヴォクシー・ノアのように電動ワンタッチで固定するものでなく、手動ベルトを設置するという手間が追加される。

私のヴォクシーでは、車いすユーザー2人を乗車させる時にのみ、取り付けております。
私のような11年選手の介護タクシードライバーでも、フロアにビルトインされたアンカープレートにベルトを固定し、ベルトフックを車いすボディ前後左右4か所にフックを引っかけ、揺れ動く事の無いようにベルトを引き締める、、、という一連の動作の所要時間で2~3分。
つまり、車椅子ユーザーをタクシー車内へ乗降させ・車椅子固定・シートベルトでユーザーを固定・タクシー出発 というフローで確実に5分以上は時間を要さねばならない。
慣れていないドライバーだと10分近くタイムロスしてしまうでしょう。
うがった見方をすれば、健常者障がい者にも優しいユニバーサルタクシーとは謳っていても、車椅子ユーザーの積極的乗車を想定していない為、車椅子固定装置にコストをかけない手動ベルト方式を採用したのだろう。
介護タクシードライバーの視点から見れば、電動固定装置でなければスムーズにリズミカルに車椅子乗降と固定が成されないと言える。
補足だが、私のヴォクシー介護タクシー車両の2列目・車椅子固定装置が手動ベルト方式なのは、10年以上の運行経験からも車椅子ユーザー2人同時搬送の事例が100件に1事例ほどしかない経験を勘案して、あえての手動ベルト方式を採用。
通常の介護タクシー運行は車椅子・リクライニング車いす・ストレッチャーなど 一人(1台)を移送するパターンが主で、その固定装置も電動固定式なのでドライバーの私自身も・ユーザーも・そのご家族もタイムロスなくタクシー乗降が可能である、、という側面も申し添えておきます。
高齢者のタクシー乗降としてJPNTAXIの低床フロア・高さがいまいち
膝関節痛に悩む高齢者らの送迎を何度も行ってきた運行経験から言わせてもらえれば、
公表値の320ミリメートルでは、それほど乗降がしやすいとは言えない。
乗降性の向上、というには正直パンチが弱いと思う。
因みに、私が日々運行に使用しているZRR80Wヴォクシーの運転席側フロア面高さは約380mmであり、そのままでは高齢者・リウマチ/片麻痺の方にとって乗車への不安がぬぐえない。
そういった過去の経験を踏まえ、サポトヨがリリースしている170mmステップを購入し、高齢者・リウマチお客様からも「乗り降りしやすい」と好評をいただいている。
※もう少し安くなってほしいが……(笑)
また、助手席側からの乗降(3列目シート使用時など)でも快適にご利用いただけるようにスライドドア連動型補助ステップを導入した。
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私の運行経験上、〝乗降がしやすい〟というのは高さ170mm~230mmの範囲内の補助ステップがタクシーに備わっていなければならないと考える。
ジャパンタクシーの5センチ低床化実現にあたっても設計・製造段階で相当な苦労はあったであろうが、やはり利便性はそれほど良いとは言えないだろう。
ネット界隈でよく記載されている「乗降性が向上」という視点・感想も、健常者の健脚で乗降性が向上したと感じられたのであって、下半身の筋力低下・関節痛に悩む高齢者らにとっては、ガードレールをまたぐくらいのハードルの高さなのである。
トヨタ開発陣も、ここは思い切ってコストをかけてスライドドア開口と連動した補助ステップ設置を標準化すべきだったのではなかろうか。
※動画はこちら
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コスト削減からかベース車両はシエンタ
シエンタのボディが、
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となった。
運転手となる為に学習期間4年(公共施設の知識習得・320もの運行ルート把握・他)を要する、世界でも超難関のイギリス・ロンドンタクシーだが、あれは、英国の街並みだからこそフィットするデザインなのであって、そのテイストを既存のTOYOTAシエンタに被せるとは、何とも残念ではないか。
こればっかりはクルマデザインに関する価値観や好き好みの感情が関わってくるものでフラットな視点は保ちにくいのだが。
しかしながら、
2013年9月8日・ブエノスアイレスで開かれたIOC総会で、東京でオリンピックが開催決定と発表されたあの日から、
東京らしさ
日本らしさ
メイドインジャパン
を世界にPRする絶好の機会を得た後、期間はそれなりにあったにもかかわらず、何故、ロンドンタクシーのデザインが模倣される事となったのか、どうしても腑に落ちないのだ。
デザイナーとしてのセンスの欠片もないけれども講釈だけは垂れたいオッサンから言わせてもらえれば、タクシー乗務員が毎日ワクワクしながら営業所車庫に向かうような・それでいて「このタクシー買い取りたいです!!」と言わせるほどのカッコよさと所有欲を満たしてくれるようなイケてるタクシーが欲しいのだ。
タクシーとは、まず、乗客にとって便利で快適な車内空間を提供するのは当然の事ながら、カッコよさ・オシャレを感じさせるボディーデザインも価値として添えて、
「どうせ移動(外出)するなら粋なタクシーで出かけようよ」
と乗客に思ってもらえるユニバーサルタクシーであって欲しいと強く願うのですが。
こちらも併せてどうぞ。⤵⤵⤵
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