平成18年12月20日 バリアフリー新法(ハートビル法と交通バリアフリー法を統合した)が施工され、新たに建設される公共施設や大型ショッピングセンター、駅、病院などの施設を建設する際は障がい者・高齢者が利用しやすいように配慮が行き届いたものにしなさい、という法律が施工され、施設管理者への義務が課せられているものの、
それから10年以上の月日を要しても、車椅子ユーザーや人口肛門使用者(オストメイト)にとって使い勝手のよいものにはなっていないと、利用者自身から意見を聴く事が多い。
勿論、全ての障がい者・高齢者に100%満足を与えられる施設整備は無理なのだが、それにしたって、「どうしてこのような取り付け方をしたのか?」「利用者の意見をヒアリングした?」と首をかしげる仕上がりの設備を度々目にする。
いや、障がい者らから言わせれば、「またかよ…」とうなだれる連続の日常なのだろうが。。。
※今記事は建物・施設に焦点を充てております。交通バリアフリーについてはいずれ。
例えばトイレの手すり
こちらをご覧いただきたい。
これ、介助者の視点から言わせてもらえれば、便座と洗面台左側手すりの距離感が近すぎて介助がやりづらいです。
壁に取り付けられている跳ね上げ式手すりと同じタイプだったなら、介助時は手すりを跳ね上げてスペースが確保されて使い勝手が良くなりますが。まぁ、便座に座った際、前方に手すりがある事で利用者本人の立ち上がりや着座をサポートする手すり、と見れなくもありません(苦笑)
例えばオストメイト対応トイレ設備の不足
オストメイトとは、不慮の事故や大腸癌などの理由により直腸の機能が不全になり、やむを得ず人口肛門(ストーマとも呼ばれます 以下、ストーマと表記)をお腹に設けている方々を指します。生まれつき肛門そのものが無い先天性の方もいらっしゃるそうです。
オストメイトは健常者のように「あ、便意がそろそろ来るな。。。」「大便したいな。。」という身体からの呼びかけが無いため自分の意志とは無関係に排便がなされています。その為、不特定多数の社会人と接する外出時の日常生活では、匂いや漏れがないか相当神経をすり減らしているそうな。
パウチと呼ばれる袋状の装具が開発されていない時期は、ストーマ出口をサランラップで巻いたりお椀をあてがって外出しなければならない歴史を知ると、大変なご苦労があったのだと唸る思いです。
パウチとは? お腹についているストーマってどうなっているの? と疑問を持たれた方は是非お読みいただきたい。
車椅子オストメイト評論家 アシトド松井が紹介するオストメイト対応トイレについて
より理解が深まりますよ、当事者が執筆しているので。
さて、オストメイトが外出される際に排便を行う為の対応トイレってどのような設備になっているかと言えば。
配慮がもう少し欲しいオストメイト対応トイレ
これのどこが不足なのかと言えば、パウチに入っている便を赤〇陶器開口部に投下→使用済みパウチをゴミ箱へ捨てる→蛇口から出る水でストーマ周囲の皮膚を丁寧に洗浄する→新しいパウチ装具と人口肛門を繋げる という一連の流れを安全に正確に行う際に、パウチ接続状態・ストーマ周辺皮膚の状態を確認する鏡が必要になってくるんです。
その鏡が取り付けられていないんですね。
配慮が行き届いているオストメイト対応トイレ
これらの鏡が無かったらオストメイトはパウチの交換が出来ない、、とは断言しませんが、「鏡が設置されている」という安心感はオストメイトの排泄行為を助けてくれる事に間違いはないでしょう。
上記画像のトイレは立ちながら排便行為を行うオストメイトが、パウチ装具を捨てやすいように高さのあるごみ箱を設置していたり、せっけん液・ティッシュが手の届く場所に設置、パウチ・カバンを仮置きするスペースが上部に設けられている所もメーカーの小さな気配りが感じられます。
バリアフリー宿泊ホテル・入浴室の排水処理について
さて、やっとこさ、今回・記事作成のきっかけを述べるのですが(笑)、
弊社のサイトを経由して予約頂いた車椅子ユーザー含むご家族との介護タクシー車中で会話が緩やかに弾み、
お客様ご家族:「ああ、あのバリアフリーホテルのブログ書いているの花城さんだったんですか?」
「ええ、なるべく車椅子ユーザー目線で取材したつもりだったのですが、ご家族の目線からはどのように受け取られましたか?何かご指摘などあればお伺いしたいのですが……」
お客様ご家族:「あちこちのホテルを宿泊してきて感じるのは、入浴室に手すりは付いている光景はよく見ますが、シャワーチェアを使用して車椅子ユーザーの入浴の承諾を好まないホテル側の排水設備の不足ですかね……」
お客様ご家族:「ホテルの入浴室によっては排水処理が上手くなされていなくて、入浴室外に水が溢れ出たりするのでそのリスクを鑑みるとホテル側からの返事が思わしくなく…」
お客様ご家族:「同じ系列ホテルでも東京ではシャワーチェア使用の入浴はダメで沖縄だったらようやく許可がおりたとか、色々ありますね…」
考えてみれば、下肢麻痺の車椅子ユーザーも浴槽に浸かりたいだろう、それならば、移動動線上に手すりは取り付けておけば問題ないだろう、、というのは健常者側の思い込みが強いのかもしれないですね。
勿論、暖かな浴槽に張ったお湯に浸かりリラックスしたいという欲求もあろうが、それよりも、サッパリしたい気持ちが大前提でシャワーチェア活用の入浴の方が、介助者側やご家族の視点からもやりやすく、時間も短縮できてベターな在り方なんだろうと思われます。
障がい者・高齢者の移動や利用を円滑化する為のバリアフリー新法の望むべき在り方とは
段差を解消したり手すりを設置したり滑りにくい素材を活用したり、客室50以上のホテルには1室以上の車椅子ユーザー向け客室を整備が設けられているか…などなどバリアフリー新法の基準リスト項目は多岐に渡り、
設備を整えてとりあえず審査基準をクリアしておこう、という施工側・管理者側と、
それらの設備を利用しなければ外出や余暇活動に踏み出すことに制限がかかる障がい者・高齢者らの実感には平成30年現在でもギャップがある事は否めない事実。
宿泊ホテルの入浴室においても公園・駅・公共施設のバリアフリートイレにおいても、既存の施設をユニバーサル目線で改修工事を行う際、また、新設工事着手の際は、地域の障がい者団体の意見を仰ぐような流れが出来ないものか、
沖縄観光に来られているお客様家族との対話を通して改めて考えさせられる思いでした。