【この記事でわかること】
快適な移動を求める障碍者(車いすユーザー)と健常者が、これから先、いがみ合わずに旅行や外出を楽しむために絶対やるべきこと
障害者が抱える物理的ハンデとこれまでの差別に対して、毎秒毎分考えられずに目の前の仕事をこなすだけが精いっぱいの健常者がほとんどなので、
心無い対応に嫌気がさす思いをなんども何度も味わってきた障碍者本人とそのご家族は枚挙に暇がないことでしょう。
私自身、介護タクシーで車椅子ユーザーへの沖縄観光と通院送迎を14年提供する中でも、間接的に肌身で感じてきたことです。
さて、先日Twitterでトレンドとなったこの話題。
JRで車いすユーザー乗車拒否にあいました。「階段しかない駅なので案内はできない」と。今の時代でも悲しいかな、よくあること。バリアフリーって全然進んでいない、むしろ無人駅が増え後退してる。味方が必要なので、長いですが、どうか読んでください、シェアしてください。https://t.co/0yvaje4eaS pic.twitter.com/XjkSTNxnPh
— 伊是名夏子♿︎コラムニスト (@izenanatsuko) April 4, 2021
時間をかけて彼女のブログを読み返してみました。
コラムニスト伊是名夏子ブログ「JRで車椅子乗車は拒否されました」
彼女の主張で個人的に気になった点は3つです。
果たして、今回のJR駅員の対応が障害者を差別(乗車拒否)したことになったのか
また、伊是名夏子さんの主張と今後の活動(やり方)が「障碍者も健常者も住みよいバリアフリー社会実現」につながるのでしょうか??
それを検証するためには、2つの法律を知る必要があります。
そして、僭越ながら、
健常者VS障害者という対立構造を生まないための根本的な解決方法についてお伝えします。
我々が望むことはお互いが旅や外出をストレスなく楽しめるようになることであり、
そのためには現状の問題点を洗い出して、何が不足しているのか/補うためにはどうしていけばいいのかの解決方法を議論しあうことが大事なはずです。
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結論から言うと、人間のホスピタリティに期待しないで感情ゼロの機械を使い倒しましょう、ということです。
バリアフリー新法ってなに?
出典は国土交通省の「高齢者、障害者などの移動等の円滑の促進に関する法律(バリアフリー新法)」で、2006年(平成18年)12月20日に施行されています。
介護タクシー乗務員視点でかみくだくと、
●道路・交通機関(バス/タクシー/電車/飛行機etc)・駅・公共施設などは、障碍者も健常者も分け隔てなくすべての方々が、移動のときに不安とストレスを抱えないように設備を整えましょう
●そのためには、「段差からスロープへ・エレベーターを設置して・手すり付き広々トイレを用意して・スライドドア/自動ドアを整備しましょう
障害者が「移動しやすく・排泄しやすく・食べやすく」感じれるように、設備や環境を整えましょうということですね。
障害者差別解消法ってなに?
出典は内閣府障害者差別解消法リーフレット「合理的配慮を知ってますか?」なので、こちらもサクッと目を通していただければ。
国が定めている概念を、一部抜粋してそのまま掲載します。
【不当な差別的取り扱いの禁止】
●この法律では、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止しています。
【合理的配慮の提供とは】
●この法律では、役所や事業者に対して、障害のある人から、社会のなかにあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者においては、対応に努めること)を求めています。
この2つの法律を踏まえたうえで、JR駅員の対応と伊是名さんの訴えを照らし合わせると、伊是名さんの対応は疑問が残るところがありました。
法律をふりかざして健常者をマウントすることが望むべきバリアフリーなのか
彼女のブログを読んで私が抱いた印象は、
これまでにたくさんの差別を受けてきた怒りや悔しさの感情が積もり積もって、「障碍者に寄り添わない健常者」VS「バリアフリー社会実現のために警鐘を鳴らす障害者」という対立構造を無意識に?作り出しているかのようでした。
また、法律という名の印籠を振りかざして、鬱憤を晴らすかの如く誠意ある対応を求めている風にも受け取れました。
この印象は私の心が少しねじ曲がっていることとも関係しています。
詳細は彼女のブログを読んでほしいのですが、
目的地の来宮神社までに経由する小田原駅 → 熱海駅 → 来宮駅間の、エレベーター有無や駅員による乗降介助対応の確認や連絡を前もって行わずに、ぶっつけ本番で当日に臨んでいることは、障碍者差別解消法の本質ではないはずです。
【合理的配慮の提供とは】
●この法律では、役所や事業者に対して、障害のある人から、社会のなかにあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者においては、対応に努めること)を求めています。
事前に電話連絡もせずにいきなり駅に来て
駅員さん4名を用意して対応すべきです
上記2つの吹き出しは彼女の取った行動を私なりの解釈で言語化したものですが、
この主張は一見正しいのですが、だからといって連絡もせずに対応(介助)を迫ることは正当化されません。
駅員さんへの負担が重すぎます。
なにより、全国各地を講演で飛び回る彼女自身、駅や電車のバリアフリー未成熟を嫌というほど見てきているはずです。
手間がかかっても事前問合せした方が正確な情報を仕入れられて、スムーズな移動につながることを知っているはずなのに、なぜ問い合わせなかったのでしょう。
それが正しくても、事前問合せする方が、駅員さんの心構えができるので心地よい接客を受けられるはずですよね。
車いすユーザーの貴方が駅員さんの立場だったらどう思いますか?
健常者の貴方は車いすユーザーの立場だったらこの階段をどう思いますか?
お互いがお互いの立場に〝なるべく寄り添う〟姿勢を忘れないことが、バリアフリー対応を加速させるうえで大事なんじゃないかなぁと、介護タクシーおじさんは思うわけなんですね。
今回の炎上案件について、車いすユーザー自身や世間の反応も様々でした。
電動車椅子の電車乗車拒否の炎上、あの方に勇気をもらって出産出来たので悪口は言いたくないけれど、公共交通機関を普段から利用している車椅子ユーザーとして言わせてもらうと、事前連絡せず駅員集めて対応しろなんてあり得ないよ。車椅子ユーザー全員がああいう風に思っていると思われたくない。
→— へのじ (@moheji_heno2) April 4, 2021
「JRに乗車拒否された」車イス利用者のブログに賛否
これを問題提起だと擁護する声が
事前連絡もなしに無人駅で電動車椅子を駅員4人で担ぐことを要求するのは障害の有無以前に非常識です
しかも卑劣なのは、結局、駅員さんに対応して貰ったのに初期対応だけを捉えて「乗車拒否だ」と喚いてるところ
— 大沢愛 (@ai_oosawa) April 5, 2021
件の車いすユーザーが無人駅で乗車拒否された案件。障害者も他の人と同じく、事前準備なしで不便なく外出できる社会がバリアフリーの理想的な形であると私も思うが、現場の駅員へのクレーマーに見えてしまう様な社会実験では当人が求める「味方」は増えない。クリエイティヴな要素が一つ足りない。
— 井上リサ (@JPN_LISA) April 4, 2021
事前連絡なしでもだれもがバリアフリーで移動できるようになるべきだと思う。自分がいつか身体が自由ではなくなる可能性を皆考えるべきだし、本当に同意。ただ私は、この記事に内在するコミュニケーションの問題にも目が行く。/JRで車いすは乗車拒否されました https://t.co/MbJrKR1Zgo
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) April 5, 2021
ここからが大事なんですが、
伊是名さんの対応はやっぱり間違ってる!!とか、重さ100キロの電動車いすを無理やり運ばせて階段から駅員さんが落ちたらどう責任取るんだ!!
と鼻息荒くするだけでは、同じような問題がまたどこかで起きるわけですよね。
なぜなら、起きた事実を批評しているだけだからです。
100%の回答はできないけれど、
100%に近い解決策をなんとか提示できないものか。
障碍者高齢者との外出を14年間提供してきた介護タクシーおじさんが脳みそフルスロットルで打開策をしぼりだしました。
障碍者と健常者が駅の階段現場でこれ以上いがみ合わないためにやるべきこと
エレベーター・階段昇降機の設備投資を惜しみなくぶち込む
車いすユーザーが悩んでいるバリアフリーのほとんどの問題は、設備投資で解決するものです。
結果として、安心安全な階段昇降を約束してくれます。
なぜなら、階段介助スキルやノウハウを身に付けている介護のプロや体力自慢のおっちゃんがいつでもそばにいるとは限らないからです。
また、ボブ・サップやアメフト兄ちゃんがそばに居たとしても、
力任せで車いすを持ち上げる〝悪意無き善意のヘルプ〟は、時として車いすユーザー自身の恐怖と不安をあおるんですよね。
駅員さんにサービス介助士などの講習を受けてもらうのも望ましいですが、
酒を飲んだら人格変わるおじさんに毎日絡まれ・電車内/ホームの汚物処理に追われ・クレーマーの暴言に精神がすり減らされている現実は離職率の増加にもつながっています。
無人駅増加の話題も最近ありましたよね。
ゼロコロナに躍起になっている指導者/専門家が声高にステイホームを叫ぶので外出する人が激減して
鉄道会社は赤字経営を余儀なくされています。
つまり、マンパワーによる階段介助はこれから先も期待できません、過度に期待しない方がいいんです。
鉄道の駅員全員がバリアフリーに無関心と言いたいわけじゃないですよ、伝わってるでしょうか。
それよりも、
荷物や人を快適に安全に不安なく運ぶことに特化したエレベーター&階段昇降機なら、
ボタン一つの操作で脂汗をかかずに、障碍者本人も介助ヘルパーも一緒に移動できるんですね。
専用ツールの安定感は、介助スキルと身体能力にバラツキのある人間の善意を超えるんですよ。
エレベーター設置が最強なのは言うまでもないですが、
- 導入費用が高い(数百万~)
- 既存の駅舎に収めるには難しい
などの問題が絡んで容易には行えないものです。
それならば、持ち運べる階段昇降機の導入はいかがでしょうか。
【階段介助の解決策:】例えば、こんな階段昇降機がありまっせ
折り畳みで邪魔にならない「車いすごと乗れる階段昇降機」
車いすごと乗れて介助者の負担はほぼゼロ、ボタン操作一つで済むこのタイプが最強です。
リンク先の動画をご覧になるとさらに伝わりますが、
電動車いすもリクライニング車椅子も問題なく乗れる広さが確保されているのが素晴らしいですよね。
バリアフリーと健康づくりの株式会社北日本メディカル「車いすのまま階段移動。国土交通省認定品です。」
車椅子ごと乗れれば、それは、ベビーカー・福祉バギーの利用者も快適に移動できることにつながります。
そういえば、焼失前の首里城にも似たようなのあったんだよなぁ。。。
話をもどして、最新の階段昇降機なら
昇降中、障害物や人に接触した時も自動停止になるので安心感倍増ですね。
安心安全は人の善意に頼らずに、お金で買うのですよ。
たとえば超コンパクト設計の可搬型階段昇降機「らく段」
弊社も取り扱っているので、恐縮ですが(苦笑)。
唯一のデメリットとしては、車いすから昇降機に移ってもらう手間なのですが、
車いすごと担ぎ上げる労力から解放されますし、滑らかで楽ちんな安定昇降を一度味わったら、専用ツールの安心感を感じて頂けるはずです。
ついに出た!あなたの車いすがそのまま階段昇降機になる「ウェルキャリー」
上記のらく段のデメリットをメリットに進化させた次世代型の可搬型階段昇降機・ウェルキャリーです。
ウェルキャリーのPRポイントは何といっても、車椅子ユーザーが愛用している車椅子をそのまま合体させて階段昇降機として使える利便性です。
ドッキングさせたままの水平移動も快適です。
伊是名さんご愛用の電動車いす重量はおよそ100キロ近くあってウェルキャリーの耐荷重オーバーになるので対応できませんが、
おおよその車いす(自走用/介助用)にジャストフィットできるように専用設計されてますので、エレベーター設備のない全国各地の主要な駅に導入すれば、駅員さんの負担は激減することでしょう。
また、「ウェルキャリー」「らく段」を備えておけば、エレベーター故障時や点検時でも、駅構内の垂直移動を可能にしてくれます。
どちらも操作習得までにかかる時間は、早い人で30分、2時間あれば十分です。
女性も扱える簡易操作性もメリットの一つですね。
導入ご検討の際には、お気軽にご相談くださいませ。
参考までにこちらの記事もどうぞ。
【疲れない1人階段介助はコレ】車椅子ごと昇降でもスベらない階段昇降機ウェルキャリーをご紹介!
というように、専用ツールや設備の活用なくしてバリアフリー社会実現はあり得ない、というのが私の考えです。
まとめ
JR駅員さんの対応は乗車拒否でも差別でもなく、法律の内容に沿って出来ること出来ないことをキチンと主張されたうえで、無茶ぶりにも対応した「たいへんお疲れさまでした案件」です。
伊是名さんの正義のコミュニケーションがまずいと思うのです。
彼女の主張では「味方を増やしてこのまま声を上げ続けることが大事だ、可視化せねば」とありました。
これから先も、事前連絡をせずに車椅子ユーザーへの階段介助を駅員に求め続け、その活動を世に訴えることが問題解決になるのでしょうか。
健常者がバリアフリー問題を見て見ぬふりするから気づかせるためになりふり構わず特攻しなければならない そのための行動だった
そのような意図だったとしたらムーブメントを起こせたので成功と言えます。
しかし、問題提起のために、敵味方の対立構造を作りだすような計らいはお互いに疲弊するだけです。
それよりも、
国民が安心して旅や外出を快適に楽しめるように必要なエレベーターを設置しましょう・階段昇降機を導入しましょう そのための導入費を補助しましょう という主張を国土交通省に問うた方が建設的だと思います。
まぁ、そう簡単に設備投資できないからこそ、駅員・車椅子ユーザーの双方は歯がゆい思いをされているのでしょうが…
しかしながら、障碍者も健常者も分け隔てなく同じ景色と空間を楽しむためには、目の前に立ちふさがるバリアを快適に越えなければならないわけで、そのためにこそ税金を惜しみなく使うべきでしょう。
健常者・障碍者すべての国民が快適に移動や外出を楽しめるように、設備投資の重要性をここに記しておきます。