例えば。
ある日を境に祖父が車椅子ユーザーとなった。
今までは杖歩行で何とか自家用車での通院やお買い物に外出できてはいたものの、車椅子生活移動を余儀なくされた。
標準重量15キロもあるスタンダード車いすをトランクから取り出し、ドア開口部の狭い助手席・後部座席から車いすへの移乗介助を不慣れな手つきで行い、
院内付き添いと院外薬局で薬を受け取りを終えて、再び祖父を車椅子から自家用車への移乗介助を行い、15キロの塊を持ち上げトランクへ押し込む、、、、、、、
これを毎週・隔週に行うとなると正直めんどい。
ましてや、腰痛持ちである事からこれ以上症状・悪化を加速させる身体介助を行う事は今後の日常生活や仕事に支障をきたす。
おお、そうだ、今乗っている自家用車も古くなってきたし買い替えを検討していたんだった。
どうせなら車椅子がそのまま入るという福祉車両に買い替えてみようかな。
何だか税金も安いとか聞いたことあるし。
まてよ。
この前、クリニック受付窓口付近のクリアホルダーに挿入されていた介護タクシーめぐり とやらのリーフレットを手に取っていたんだっけ。
車椅子専用タクシーで迎えに来てくれて介助もやってくれるらしい。
運転する手間や慣れない身体介助を行う事を考えると、やっぱりプロのタクシードライバーに任せた方が良いのか、、、、、?
福祉車両を自家用車として購入する場合と
必要な時だけ福祉タクシーを活用する場合と
どっちが金銭的にお得なんだろう?
そんな疑問を持たれた方は全国的にチラホラいるはずなので(笑)、
介護タクシードライバーの私が自家用車維持コストと福祉タクシー活用コストの両方をシュミレーションしてみましたよ、というブログです。
介護タクシー活用or自家用車所有のメリット・デメリットをおさらい
自家用車所有 メリット→外出したいと思った時に外出できる。所有欲を満たせる。
デメリット→ローン支払い・税金・駐車場・車検・修理・燃料にかかる維持コストを負担しなければならない。
介護タクシー活用 メリット→使いたい時だけ使えばいい。運転する労力や車両維持費コストからの解放。
デメリット→料金負担が重い。接客レベルの低いドライバーと悪臭タクシーへ遭遇する危険性をはらむ精神的負担。
とまぁ、概要はこんな感じでしょう。
それぞれにメリットデメリットは必ずあるわけなので、そんな事より購入コスト・維持費コストはどうなっているんでしょうか。
私が生まれ育った沖縄をモデルとしてコスト面を論じます。
車椅子専用・福祉車両を購入した場合のコスト
乗用車サイズ『新車・ZRR80ヴォクシー 車椅子1脚仕様 スロープ サードシート付』
※自家用車の場合、車椅子ユーザーを2名同時乗車という状況が無いに等しいと思っているので、車いす1脚仕様をモデルに挙げました
購入コスト
車両本体価格:¥3,150,000の場合(メーカーオプションを付けない→カーナビ・エアロパーツ・アルミホイール・サイドエアバッグなど)
消費税 :非課税
自動車税:減免(つまり免除される しかし、毎年・5月末までに自動車税事務所に申請しなければならない 福祉車両所有者が障がい者本人or同居する家族or常時介護する人に限られる)
自動車取得税:減免(購入後、30日以内に自動車税事務所に申請しなければならない 福祉車両所有者が障がい者本人or同居する家族に限られるor常時介護する人に限られる)
重量税 :¥22,500(3年分) 自動車重量税の調べ方・引用 国土交通省
自賠責保険:¥39,120(3年分)※事故件数増減により変動アリ
リサイクル料金:¥12,750
購入時コスト合計→¥3,224,370
維持費コスト(年間)
駐車場:月平均¥5,000×12=¥60,000
任意保険:月平均¥6,500×12=¥78,000
ガソリン代:月平均¥15,000×12=¥180,000
322万新車・購入ローン支払い:月平均 ¥58,000 (※固定金利3% 頭金なしボーナス払いなし 支払い回数 60回(5年) とした場合)
約¥58,000 ×12=¥696,000
とまあ、ざっくりこのようなシュミレーションになります。
これまた超ざっくりのイメージですが、322万の新車を購入すれば年間で101万余も出費しなければならない、とも見れますし、駐車場から1ミリも動かさなくても(そんな事はありませんがw)、固定費で年間83万余を支払わなければなりません。
地域によっては駐車料が無料だったり通勤先・外出先が近かったりすると月平均コストも下がりますが、こうやってリサーチしてみると、思っている以上に車・所有へのコストが、かかっている事が分かります。
ローン支払い・ガソリン代・駐車料金は財布からお金が出て行ったり口座から自動引き落としになっているので、出費に対するイメージや金銭感覚が何となくつかめているでしょうが、
いつ起きるか分からない車両故障への修繕費も考えておく事を考慮すると、目には見えない出費も上記の固定費と合わせて考えておかねばなりません。
これは個人的意見ですが、福祉車両のサイズ選定、つまり軽自動車がいいのか普通乗用車がいいのかの選択で悩む方がいらっしゃいますが、迷わず普通乗用車をチョイスしましょう。
近年の軽自動車は車内サイズも広々としてユーザビリティ溢れる機能が標準装備されていますが、
- 660cc排気量エンジン出力では傾斜のきつい上り坂・市街地でのキビキビした走行が臨めない
- 車椅子ユーザーを乗せると付き添い者は2人(運転者・助手席)のみになり、グループ外出(3~5人)に制限がかかる
軽自動車を選定する際、 車体のコンパクトさ、税金・維持費(ガソリン代・車検・自動車税・修繕費など)が抑えられる 事を上げると思いますが、車椅子ユーザーを乗せてドライブするという前提では 大は小を兼ねる という視点が大事です。
エンジンパワーの馬力・車内スペースのゆとりは当然ながら軽自動車より普通乗用車が上回りますし、税金の負担面も福祉車両の優遇措置をうまく活用すれば軽自動車税金のメリットをペイするほどになります。
福祉車両を所有するか、否か?
322万の新車ヴォクシー車椅子1脚仕様を購入し、毎月支払わなければならない固定費は(上記・青色テキスト部 合計額)は ¥84,500 となります。
新車じゃなくて程度の良い中古車でいいよ、という方でも半額の ¥42,250 は毎月負担しなければならないとみていいでしょう。
車両を購入し所有するという事はそういうことなんですよね。
また、
車椅子ユーザーの祖父と外出を楽しみたいというきっかけで購入した福祉車両も、所有者の仕事が忙しくて都合がつけられなくなったり、引っ越し・転勤などにより距離が遠くなって結局は祖父の送迎対応が出来ず、車椅子乗降機能を使わずに普通の乗用車として活用している、という事例も見聞きします。
そんな事態になるとは思わなかったから福祉車両購入を決断したとも言えるのですが(笑)
介護タクシー料金はいくらかかる?
「目的地までの距離をグーグルマップで弾き出して、介護タクシードライバーにお願いしたい身体介助・福祉機材・と距離を伝える」
そうする事で利用料金の見積算出をスピーディーに答えられます。
この介護タクシー利用料金に関しては、通院なのか・お買い物同行なのか・貸切観光なのか・結婚式披露宴参加への送迎のみなのかetc…… 利用内容によって料金が変わってきます。
お客様側からすれば料金設定が分かりづらくてややこしい、という意見もよく聞きます。私もそう思います、申し訳ございません(苦笑
その利用料金の数字が掴めなければ福祉車両購入との比較が出来ないので、先ずは、お近くの介護タクシー事業者へお問合せするしかありませんね。
しかしながら、このめんどくさい介護タクシー利用の見積問合せを行う事で その事業者の接客姿勢・サービス内容の良しあしがつかめてきます。
電話対応の声のトーンだったり、メール問い合わせでのレスポンスだったり、かみ砕いた説明を行えるか?だったり。
事業者の姿勢も福祉車両見積と合わせて査定してください。
どちらがお得かよりも貴方がしたいと思った事を
過去に、退院利用や救急車搬送後の定期的検診での往復ご利用、具合が悪くなって再度入院と。。。 短期間で集中的に介護タクシーをご利用するお客様がいまして、それだけのご利用頻度なら自分らで福祉車両買った方が良いのでは?とも思ったそうです。
正直、介護タクシー代が馬鹿にならないくらいでしたから。
私の方としては売り上げも確保できて有難いとは思いながらも、目まぐるしく体調変化を起こす患者の対応に四苦八苦するご家族を見ると複雑な心境でもありました。何よりご本人が辛かったことでしょう。
福祉車両購入・所有も長期的にコストを支払い続けなければなりませんし
使いたい時だけ使えばいい介護タクシーも1回ごとの支払い料金は負担が軽いとは言えない。
どちらにも一長一短がある事を考えながら
考えられる最善の選択をチョイスしていくしかないんでしょうね。