昨今のバニラエア事件で批判や議論が日本・世界中を駆け巡り、改めて浮き彫りになったのは、公共交通機関・公共施設へのバリアフリー環境や、人々の意識が今回の事象も含め、未だ未熟なものであるという事でした。(旅行をためらう障がい者が増えた事でしょう。
平成18年12月10日、バリアフリー新法(障がい者・高齢者らが移動・利用しやすいバス・電車・新幹線・タクシー・フェリーなどの公共交通機関を整備していきましょう、および、移動しやすい・バリアのない建物内外環境を整えていきましょう)
が施行されました。
あれから10年以上経過した平成29年にあっても、バリアフリー新法の理念が行き届いていない場所はクロワッサンアイランドの水納島にも存在しました。
誰もが暮らしやすい社会とか、障がい者にも優しい環境づくりを! と謳う議員は唸るほど見てきましたが、それは、有権者・庶民に向けての耳障りの良いワード選定であり、それを実現するにはどうしたらいいか?当事者にとって利便性のある環境整備に繋がっているか?
という構想→実現→検証には至らないお決まりのキレイごとマニフェストなのです。
バリアフリー環境整備はジワリとは進んでいましょうが、10年以上経過してこの程度なのかとも実感している所です。
水納島高速船フェリーから港までをつなぐ乗降スロープが結構問題だ
まず、本部町・渡久地港フェリー乗り場の環境を時系列で述べていきましょう。
合名会社・水納海運が運行するニューウィングみんなⅡ に乗り込んでみます。移動時間はおよそ15分。チケット代は大人・往復で¥1,710 障がい者なら手帳提示の申込用紙記入(面倒だな)で半額で往復が可能です。
じつは、今回のフェリー利用で渡久地港には3回も来ており、初回は悪天候の為、フェリーが休運行となっていました(無駄足勇み足)。天候の不安を感じたら水納海運へのお問い合わせをオススメします。
渡久地港フェリー乗り場内の施設には車いすトイレが整備されていました。
非常にありがたいですね。
ここ最近のアンケート調査からも障がい者は旅行先のトイレ場所の把握や情報をリサーチされている事が、当事者のブログ発信などから確認できています。
いよいよフェリーへ乗り込みます。
船内からフェリー乗り場の視点に切り替えましょう。
じつは、潮の満ち引きによって、このスロープ先端が上下するように設計されています。(ちょうつがいを取り付けているのでしょう)
もう一度、戻しましょう。
港からフェリーに向かって車椅子ユーザーを押し上げていくと、ユーザーの身体が前に倒れてしまう危険性をはらんでおり、ちょいとばかり体力を使いますが、後ろ向きで車椅子ユーザーを引っ張り上げれば安全に乗船させることが可能です。(やり方は色々あります。)
このように、
渡久地港のスロープ環境は良しとするところなのですが。
水納島・港へ降り立つ際のバリアとは
やっとこさ本題に入ります。
渡久地港から移動時間15分、水納島港に到着しました。
したんですが。。。。。。
冒頭のアイキャッチ画像でもお分かりの通り。
この写真撮影日時は2017年7月6日木曜日 AM11:00発 水納島→渡久地港行の船内から撮影したもの(復路)。
AM9:30発 渡久地港→水納島港 AM9:49着(往路) の状況はこうなっていました。
潮の満ち引きのよってスロープの角度がかなり変化していますね。
私が言いたいのは、このスロープの設計が健常者視点のみで作られたものであるという指摘です。
そして、それは、
車椅子ユーザー(電動車いすユーザー・片麻痺も含む)への配慮がなされていないという事にも繋がります。
この状態で車椅子ユーザーを押し上げるのは超絶困難を極めます。勿論、港へ降りられないという事はありません。ただ、大人2人の介助が必須になってきます(かなりハードですが)
このフェリーで働く体格のいい乗船職員に過去の経緯や現在の対応などを伺いました。
バリアフリーとは・ユニバーサルデザインとは健常者・障がい者問わず、誰もが、行きたいと思った時に行ける環境整備作りであり、社会に暮らす人々みんなで共有すべき概念であり、その配慮が行き届いていない所は整備していきましょうという方針ではなかったでしょうか。
それを10年以上前に誓ったはずなのです。
観光立県を強く掲げた沖縄県。
島の美しい海や白い砂浜は健常者が楽しむ為だけに存在するのでしょうか。
ようやっと重い腰を上げて旅行や沖縄観光を決意なさった障がい者がこのスロープを見た時にどう感じるのでしょうか。
仰る通りですが、見てみぬふりをする(又は、どう手伝えばいいかわからない)日本人が多数です。欧米人は率先して笑顔で動いてくれる方が多いです。
あれ、不思議ですね。
他民族との共生を通して培われた価値観なのでしょうか。
話を戻して。
必ず手伝ってくれるとは限らない状況を知った上で障がい者は旅行への一歩を踏み出そうと思えるでしょうか。(声掛けさせれば?という論理は障がい者の心理を知らなさすぎるでしょう)
このブログ執筆時からさかのぼる事、6月21日、
この状況をどうにか出来ないものかと考え、私は、本部町観光協会に連絡を入れました。そうすると本部町役場の商工観光課に回されました。
私はこのような発言を担当者に話しました。
と、
当たり障りのない返事が。
問い合わせする前から分かってはいた事です。たかだか、介護タクシードライバーの・しかも・他市町村の人間が電話でガチャガチャ申し出るわけですから(笑)改善提案をしてすぐにはスロープが改善されるだろうなんて思えませんでしたが、
どうしても、意見だけは述べたかった。
こんな状況で困る人たちがいるんだよって。
言っても無駄だからって諦めるより、伝えたくて伝えた。
そうしたかったから。
また、大多数の人にこういう現状を知ってもらうにはブログが最適だと判断し、今回の記事投稿となったのですが。
誤解のないように申し上げますが、
車椅子ユーザーの上陸が100%ダメではないんですね。
フェリー船員にも、水納島で働く人々にも聞きまわって確認した事ですが、車椅子ユーザーは実際に水納島で観光を楽しみ、たびたび来られているとのこと。
(2017年7月6日 再取材時に聞き取り確認済み)
例えば、海面の水位が上がる満潮時を狙ったりすれば、介助者への負担もそこまでではないとと思います。
ただ、このスロープ環境が好ましくないんです。
フェリー船内のバリアフリー環境もイイだけに。
フェリーが素晴らしいだけに、非常に勿体ないし、もどかしい(そう感じるのは当事者と介助者だけですが)
何とかならないものでしょうか。
例えば、このような巻き取り式のスロープを活用したり、交通エコロジーモビリティ財団の
海上交通バリアフリー助成事業を活用すれば宜しいでしょう。その為の助成事業ではないですか。
とはいえ、このようなバリアフリーの矛盾やすっきりとしないモヤモヤ感は全国各地に存在するはずです。障がい者差別解消法が平成28年4月1日に施行されて1年余。
先日のバニラエアの件と照らし合わせてどうお考えになるでしょうか、皆さん。
こういった移動環境の不具合は、先々の事を考えれば、人の優しさに頼るのではなく、思い切った設備投資が必要だと思うのです。フェリーと港をつなぐほんのわずかな1メートル足らずの直線距離が障がい者にとっては10メートルを歩かされるような心理的バリアを感じるのだと思うのです。
勿論、コストがかかる事ではありますが、
健常者も障がい者も利用しやすい環境整備におカネをかけて誰が損をするのか。
この清らかな美しい海は、
外出したくても容易に行動に移せない障がい者たちや移動困難者にも堪能してもらうべきです。
今回の下見を通じて、改めて、水納島の観光ポテンシャルに驚かされ、障がい者のお客様をご案内したいと強く感じたのでした。