拝啓:豊田章男社長
癒しと温もりの麗しの島から、名もなき代表社員がとつぜんのお便りをぶしつけに贈りますこと、大変ご無礼だとは承知しておりますが、どうしてもお伝えしておかねばならないのです。
次世代へタスキを渡す その前に。
私の自己紹介をさせてください。
沖縄県で外出先バリア(物理的/人間の)を解決する 障がい者高齢者専用介護タクシーに12年以上携わっております、合同会社めぐり 代表社員の花城健(たけし)と申します。
万が一、私という人間性に興味を持ちましたなら、こちらをお読みいただければどのような価値観と使命感を持って取り組んでいるかの一端を知ることができるかと思います。
まずは感謝を述べさせてください。
業務車両・福祉のイメージをぶち壊す大人COOLの外観と車いす乗降アクセシビリティ抜群な、TOYOTA 80ヴォクシー・ノア・エスクァイア車いす福祉車両を開発/リリースくださいまして本当にありがとうございます。
女性のお客様からも
お褒めの言葉を何度も頂戴しますので、禿げる思いで車両選びに時間をかけて良かったと私の毛根も共感して活性化しております。
また、福祉車両への買い替えで悩んでいたかつてのお客様は、弊社所有の介護タクシー車両を利用された時に大人COOL外観と車いす乗降の快適さに心を打たれて、同じ80ヴォクシーを購入なさったそうです、ああなんと素晴らしいことでしょう!!
おっと、そんな戯言のためにパケット通信300MBも無駄にしてしまいました、申し訳ありません。
さっそく本題に入らせていただきます。
外出先バリアに不安を抱えている障がい者高齢者お客様を12年間・9000人以上お運びして実感してきた
「ここをぜひ改善して頂きたいです福祉車両」
というポイントを、なんとしてもお伝えしたいのです。
具体的に述べますと、
◆移動中のささいな振動に身体を痛める障碍者のために、最上の乗り心地を約束する足回りの改善(カイゼン)
でございます。
この提案には私個人の意見のみならず、予期せぬ交通事故やスポーツ事故によって障害を負った障碍者の〝声〟も交えた願いであることをくみ取ってくだされば幸いです。
マジョリティは突然マイノリティになる 福祉車両の使命とは、快適乗り心地を追求し続けることだ
ある日突然交通事故は襲いかかる 車いすリピーターと介護タクシーのお話
私のリピーターさんに中途障碍者の車いすユーザーがいます。
交通事故をうけて左半身の筋力が劇的におちて車いすでなければ自力移動が不可能なかたです。
介助者がそばに寄り添って手を携えれば、すり足ながらも起立姿勢で自力歩行は可能です。
しかし、外出先には当たり前に階段・段差・ぬかるみ・凸凹・傾斜・濡れた路面や障害物が立ちふさがっています。
そのようなバリアを前にすると、たとえ介助者がそばにいても自力歩行がつらくなります。このバリアは筋力低下をさけるためのリハビリ訓練として捉える事ができません。それは、当事者にとって〝酷〟というものです。
ですので、外出時に車いすは欠かせないものです。
介助者にとっても効率的な移動を提供できますし、障がい者本人も移動がとてもラクになります。
そんなリピーターお客様が、私が過去に所有していた60系ノア車いす福祉車両と現在活躍中の80ヴォクシー車いす福祉車両で、移動中に漏らした一言が私の心を揺さぶりました。
ある日突然告げられた「脳脊髄液減少症」わずかな揺れが増悪にもなりえる
脳脊髄液減少症(のうせきずいえき げんしょうしょう) という言葉をご存知でしょうか。
1983年に発症が確認された病気で、追突などの交通事故や柔道などのスポーツに取り組んでいる最中に身体に起きた〝衝撃〟により、脊髄の膜が破れて本来漏れてはならない髄液が漏れてしまう症状のことです。
髄液が漏れることで、
■強烈な頭痛
■めまい
■不眠
■首が痛い
■耳鳴り
■ものが2つに見える
これらの不快な症状に、日々悩まされているとのことです。
詳しい資料は下記のリンク先も参照いただければ幸いです。
脳脊髄液減少症の方を、弊社所有車いす福祉車両タクシー(80ヴォクシー)で観光ドライブを提供したことがあります。
その方は普段、電動車いすを操って外出先(歩道/通路・施設内)の移動を行うのですが、車での移動となると、電動車いすのまま乗降できる80ヴォクシーでさえも車いす乗車定位置ではなく座席を希望されるのです。
付け加えておきたいのは、車いすユーザー全てが自力で座席に移れる筋力と意思を持ち合わせてはいません。
車いすから乗車シートへ介助するにしても、段差380mmバリアを脂汗をかきながら移乗介助しなければならない事情が多数であることをご理解くださればと思います。
モノづくりは人づくり 車いす福祉車両の常識を令和で刷新するとき
車いす乗降性の快適性は申し分ありません。ただ、車いす福祉車両のステージも次の段階に移らなければならないと考えます。
冒頭で申し上げた「最上の乗り心地を福祉車両にも」ということでございます。
そのまえに、現行の福祉車両の乗り心地を構成する仕組みを振り返りたいと思います。
ご存知かとは思いますが、80ヴォクシー車いす福祉車両での車いすユーザー定位置は助手席裏の位置です。
多彩な移動用途に応えられる80ヴォクシーでは、車いすユーザー2名同時運行や車いすユーザー1名+付き添い者5名同時 貸し切り観光にも対応する「タイプ1車いす2脚仕様」が、介護タクシー事業者の中では人気を博しています。私もこちらのタイプを所有しております。
車いすユーザーそれぞれの指定席床面をのぞきますと、このようになっております。
ごらんのように、金属むき出しの状態です。
内装カーペットの厚みも5mm以下ですので、路面からの凹凸を吸収できるとはとても思えません。車椅子利用の高齢者ですとお尻の筋肉が弱って薄くなっているので路面からの突き上げで不快を覚えてしまい「痛っ!!」と声を上げられることもしばしばです。
今度は、我々健常者が座る乗車シートに注目してみたいと思います。
身体をやさしく包み込むホールド感と、路面凹凸からの突き上げを限りなく和らげるクッション性に長けていることがすぐにわかります。
もう一度、車いすユーザー指定席と健常者指定席の構造を見比べてみます。
もう、明らかに違います。快適な乗り心地がすでに平等ではないのです。
ここで「車いすだからしょうがねぇじゃん」という思考には逃げたくありません。
車いす乗降のアクセシビリティを確保しつつ、車いすユーザー指定席の乗り心地向上を実現するためにはどうすればいいのか?
トヨタ車体富士松工場勤務と豊田自動織機・東浦工場で期間従業員として勤めた私は、足回りの構造を見直すしかないのではと考えました。
ずばり言わせてください。
足回りにもっとコストをかけて最上の乗り心地を福祉車両にも表現してみませんか?というお願いです。
80ヴォクシー・ハイエース福祉車両〝にも〟ダブルウィッシュボーン式足回りを採用して最上の乗り心地を
送迎業務や介護タクシー業務で全国シェアの高いヴォクシー・ハイエースを例に取り上げさせていただきました。
まずは弊社所有の80ヴォクシーの足回りから。
黒い蛇腹状のケース内側にスプリングがあるわけですが、そのスプリングと黄・赤ラインが印されたショックアブソーバーで路面凹凸からの突き上げを吸収しているわけですよね。
この足回り形状が総称してトーションビーム式サスペンションと言われております。
参照サイト:サスペンションの種類と構造の違い【今さら聞けない自動車用語】
◆荷物/人を多く乗せるために室内フラット化を実現しやすい
◆構造がシンプル 部品点数が少ない
◆ゆえに低コストを実現できる
トーションビーム式を採用するメリットはこのようなものです。
続いて80ヴォクシーよりも多人数かつ荷物積載性に優れ、救急車/民間救急タクシーとしても全国で活躍中のハイエースの足回りをご覧ください。
重い荷物(1000㌔)を運ぶことを前提に設計されているリーフサスペンション式ですので、乗り心地を犠牲にしながらも耐久性向上と整備しやすい利便性として割り切っています。
弊社所有の80ヴォクシー車いす福祉車両は、リーフサスペンション式よりも乗り心地良いトーションビーム式なのですが、前述したように車いす指定席真下からの突き上げに不快な思いをされている車いすユーザーのことを考えると、最上乗り心地を約束するダブルウィッシュボーン式採用がベストなのではないかと思案しました。
ダブルウィッシュボーン式を採用するメリット・デメリットは以下のようになります。
【ダブルウィッシュボーン式のメリット】
■サスペンションの上下動がスムーズでタイヤのグリップ力を有効活用できる トーションビーム式に比べ乗り心地は格段に向上
【ダブルウィッシュボーン式のデメリット】
■部品点数が多くなるので高コスト
■部品をおさめるためのスペースが必要
高級ロイヤルサルーンミニバン・アルファード/ヴェルファイアで採用されていることからも、その最上乗り心地は約束されております。
エグゼクティブな人々に快適移動かつ高級乗り心地を提供する それを実現するためには相応のコストと想いをかけて設計デザインする
そのようなコンセプトは誠に素晴らしいです。
ならば、このようなコンセプトに基づいた福祉車両創りはいかがでしょうか。
マイノリティでも当たり前に最上の乗り心地を提供します それを実現するためには相応のコストと情熱をかけて設計デザインします
冒頭見出しでも申し上げましたとおり、
マジョリティ(多数派)の健常者はある日を境にマイノリティ(少数派)になってしまうのです。
当人たちはそんなことは望んでもいません、不条理に突然、その状況と環境を強いられます。
そのような環境に陥ったとしても、最上の乗り心地が福祉車両にも用意されている という選択肢の幅を増やしてほしいのです。
ミニバンという構造の親和性/類似性からも、アルファード/ヴェルファイアのダブルウィッシュボーン式足回りを、ヴォクシー車いす福祉車両へ採用を検討いただけないでしょうか。
超COOL外観にミニバンの常識をぶち壊す最上乗り心地が組み合わさった次世代ヴォクシー・ノア・エスクァイアなら、更なる需要喚起が期待できます。
貨物車ベースのハイエースにダブルウィッシュボーン式足回りはかなりの高コストを求められそうです。
貨物車=リーフサスペンション式という旧来からの常識をぶち壊さなければなりませんが、全国各地の病院に配置される救急車、そして民間救急車の買い替えニーズを喚起するカンフル剤として〝乗り心地極上にして最上最強〟を打ち出せるのではないかと期待できるのです。
まとめ
このお便りを執筆する前に、運命の巡りあわせなのか、豊田章男社長の決算発表を知る機会に恵まれました。
【全文】必読! トヨタ2020年3月期決算、 章男社長スピーチ
2009年就任後から起きたリーマンショック・東日本大震災・リコール問題・超円高という難題に固定費圧縮で乗り切り、
長い歴史の中で醸成されてきた「トヨタは大丈夫」に危機感を覚え、副社長廃止・役員体制の抜本的見直しを図り、
次世代にタスキを渡したい! という強い信念で、コロナ危機下においても営業利益5000億円を見込めるほどの偉業を成し遂げられようとしております。
私は、豊田章男社長に尊敬の念を抱いております。
なぜなら、ご自身がレース車を操り4時間耐久レースにも参加するほどの〝現場畑〟であるからです。
現場の肌感覚を知っている企業のTOP(社長)だからこそ、支える社員たちは、親しみを覚え・敬意を表し・更なる成長のためにTOYOTAと人生を共にするのだと勝手ながら思う次第です。
そして、どうか、福祉車両にも愛と情熱とコストを注いで頂けませんでしょうか。
交通事故/スポーツ外傷による脳脊髄液減少症の方は、症状緩和のためにブラッドパッチ療法が求められ、対応できる医療機関へ車で数時間も移動しなければならない現実があります。
患者の方は、移動時の〝振動〟や〝衝撃〟が怖いのです。
乗り心地最上は正義だと考えます。
もっといい福祉車両づくりに種まきをして頂けませんでしょうか。
もっといいクルマづくりの精神で創られた福祉車両は世界各国でも支持されるはずです。
YOUの視点=自分以外のだれかを幸せにする
ものづくりは人づくり
この言葉にも心を打たれました。
と同時に、マイノリティ(少数派)が快適に移動できる環境づくりにお金をかけることは自分以外のだれかを幸せにしていることだとも受け取れました。
次世代福祉車両へ、YOUの視点をもってモノづくりに取り組んでいただけましたなら、こんなにうれしいことはございません。
お忙しいにも関わらず長文にお付き合いくださり誠にありがとうございました。