拝啓 豊田章男さま
先日はグーグル海に私の想いをしたためましたが、お手元に届きましたでしょうか。
次世代福祉車両の乗り心地最上に向けて、モノづくりJAPANの世界的権威であるTOYOTAのエッセンスが1日も早く投入されます事、心から願う次第です。
さて、先日の駄文は冒頭から無駄口たたいて貴重なお時間とパケット通信代をとらせてしまいましたので、さっそく問題提起に入らせていただきます。
ズバリ、〝健常者と同じ景色の共有〟を、車いすユーザーにも提供できませんでしょうか。
平成から令和にかけて市場に投入されている福祉車両では、ドライブならではのうま味(楽しみ)が、残念ながらそがれてしまっている現状なのです。
当事者は小さなストレスを押し込めながら楽しんでいるふりをしている現実があるのです。。
車椅子福祉車両が車いすユーザー〝視点でない〟理由
結論から申し上げますと、お尻の位置(高さ)が最初からズレているので、視点も同様にズレていきます。
つまり、車両構造上の問題・コストパフォーマンスを追求し合理的経営をすすめたがゆえの産物に課題があると指摘せざるを得ません。
論より証拠です、さっそくサンプル車両と車いすを活用して車いすユーザーの視点を追体験して頂けますでしょうか。
サンプル車両はもちろん、TOYOTA80ヴォクシー車いす福祉車両(タイプⅠ/2脚仕様)です。
介護タクシー事業者・デイサービス送迎者・福祉レンタカー・自家用福祉車両としても人気が高く、全国のユーザーからも愛用され続けています。
自他共に認める、とにかくカッコいい福祉車両です。
サムタイム時々お客様からこのようなお褒めの言葉を頂戴出来て幸せな毎日を送っています。
このような既成概念をくつがえすクルマづくりを福祉業界はもっともっと求めているはずです。
そして、車いすユーザー視点を追体験するために用意した機材は、弊社使用のスタンダード車いすとしました。
公共施設などの正面出入り口でよく見かける形状の車いすです。
全国の介護施設・病院・福祉レンタカー・介護事業所の送迎車両/使用機材でよく使われていて馴染みのあるこれらの車両・機材をサンプル指標とすることが、福祉車両のアイポイント改善を語るうえで説得力と共感を提供できるのではと考えました。
福祉車両内の車いすユーザーからは 外の景色がこう見えている
まず、車いすユーザーが普段、どのような視点から車外の景色を見ているかを確認してまいりましょう。
80ヴォクシー車いす福祉車両(タイプⅠ)では、助手席裏が車いす指定席になっています。
申し遅れました、サンプル人間の私の体格ですが、身長164㌢ 座高80㌢の胴長短足野郎でございます。
さて、車いすユーザーの視点はどのようになっているのか。
※赤破線は、視点中心(アイポイント)をわかりやすく示したものです
上記画像2つは、車いす座面の座り心地を快適にするためのクッションを使用していない状態の視点です。車椅子ユーザーの多くは路面凹凸からの突き上げ不快を少しでも和らげるために、シートクッションを使用していることが多いです。※厚みは3㌢~5㌢が多い
ですので、140㌢~165㌢までの小柄な体格の方以外は、この画像中心の破線よりもさらに上の視点になっているのです。
つぎに示す画像をご覧いただきますと、より、伝わるかと思います。
体格の良い車いすユーザーや電動車いすユーザーの視点の先には〝常に〟障害物がさえぎる
今度は、中・長距離ドライブでの身体疲労を和らげる厚めのシートクッションを敷いた状態での、車いすユーザーの視点を追体験してみましょう。
このクッション厚みを利用することで、身長164センチの私が身長175㌢以上の体格ある車いすユーザーとして、また、座面の高い特殊型電動車いすユーザーの視点として追体験することが出来ます。
さぁ、どうなったか。
ご覧のように、視点の真正面に窓枠や内装カーペットが覆いかさぶって車外の景色を存分に楽しめていないことがわかります。
参考までに、特殊型電動車いすユーザーの車内風景もご覧ください。
特に、頭の位置をご確認いただきたいと思います
私は、健常者のように容易に外出できないハンディキャップの方たちを何度もお運びしてきて、ドライブの楽しみっていったい何だろう?と内省してみました。
答えは、
同乗者と同じ視点で車外の景色を共有する(できる) ことが、ドライブを楽しむ(楽しめる) と思っています。
眼前に迫りくる古宇利大橋両サイドから見える美しいオーシャンビューや、南国の空にでんと構える モクモク入道雲、台風銀座到来の予兆を示す沖縄県花・デイゴの花などが同乗者と同じように見えていなければ、せっかくの外出ドライブの醍醐味を味わえていないのではないかと 思えてならないのです。
なぜ、このようなアイポイントのギャップが生まれるのでしょうか。
車内をくまなく観察すると、答えは、健常者が座る乗車シートと車いす座面のギャップにありました。
福祉車両の車いす定位置からクリアに外を見れない構造上の問題
ご覧のように、乗車シート座面よりも車いす座面のほうが高いことがわかります。目測およそ20センチのギャップです。
同身長同体格の人が乗車シートと車いすを乗り比べた場合、車いす側の視点が20㌢高くなるわけです。そうなると、車両ボディ(窓枠/内装)がアイポイントに覆いかさぶってきて、クリアに快適に車外の景色を楽しむことができないんですね。
車外の景色なんて大したことない?そう言えるのは当たり前に外出できる環境と身体があるから
この問題は、ある人からみれば些細な問題として感じられることでしょう。
私はそう思えないんです。
例えば直射日光にあたり続けることが身体に影響を及ぼす難病(色素性乾皮症)の方にも車いすユーザーがいらっしゃるわけです。
例えば南国特有のスコールが突然降り注いで、車外へ出たくても出られない事情も起きます。
まず知っておかなければならないのは、テレビやニュースでは報じられていない難病や障害を抱えた方がいて、その方たちの日常は、施設や病院や自宅にこもりきりの毎日が確実にあるということです。
難病患者/障がい者はマイノリティ(少数派)です。
仕事先や友達・知人や親せきに難病患者/障碍者がいることは稀です。なので多くの社会人・子供達には彼らが抱えている悩み・不安をリアルに感じれない。
リアルに肌感覚で感じられなければ当事者意識を持つこともできないです。
私もこの介護タクシーという仕事に携わっていなければ、外出先バリアに悩む障がい者は、1年に2度3度見かけるかどうか という日常だったと思います。
この仕事をしていなければ、段差に躓いている車いすユーザーへの助け方がわからなくて見てみぬふりをしていたと思います。
義務教育で障がい者施設訪問や介護施設へのボランティア参加をプログラム化されていないのですからそうなってしまうのです。そういう方が大半です。
障がい者との共生は1回でも多く触れ合って相手の話に傾聴することの回数を重ねることで理解が深まります。
現場を積み重ねることで想像力も養われて、慣れてくるのです。
申し訳ありません、話がそれました。
そのような事情を抱えた障がい者・難病の方々がこの日のためにと体調を整え、医療介護関係者の助けも借りながらいざ外出されたときに、車外の景色をクリアに眺めて同乗者と同じ景色を共有して楽しくおしゃべりしたいはずだと思うのです。
たくさんの障がい者を移動をお手伝いしてきて、この問題は何とか改善出来ないものだろうかとずーっとモヤモヤしていました。
ちなみに、80ヴォクシーよりも多人数・多積載が可能なハイエースでさえも、車いすユーザー視点(1m)には窓枠や内装カーペットが視界を半分近く遮っている現状であります。
乙武洋匡さんご愛用の特注車いすなら座面の高さを調整できるので、この問題はすぐに解決できるのですが、多くの車いすユーザーはそのような特注車いすをご使用ではありません。
豊田章男社長、令和こそYOUの視点でどうにかならないものでしょうか。
クルマ創りの最前線にもたっていない、一介の介護タクシー乗務員がピーマンのようなスカスカ脳みそを働かせて提案できる策が2つになりました。
この案(夢)は、実現可能でしょうか。
車いす福祉車両の視点(アイポイント)快適化のために必要なこと
1.窓枠の拡大化
例えば80ヴォクシーの場合、現在の窓枠をあと20センチ拡大化することでさらにクリアな車外景色を楽しむことができると考えます。
ハイエースも同様に20㌢以上の窓枠拡大化を試みます。
ドライブでは水平目線先の情報に加えて、上側に見えてくる情報をキャッチできることも醍醐味の一つでしょう。
一つ気がかりは、80ヴォクシーの美しくも武骨さただよう流線形のボディ外観にどのような影響を及ぼすかということです。
しかし、合理性と芸術性を両立できる技術や感性が世界のTOYOTAにはあると確信している私です。
2.車内床面の更なる低床化
平成16年式AZR60系ノアで介護タクシー運行を提供していたころから比べますと、弊社所有 平成26年式80ヴォクシー車いす福祉車両では、ニールダウン(車両後輪側が下がる)機能を使わずとも車いすユーザーの乗降が行えるようになりました。
つまり、2分近くかかっていた車いす乗降介助が1分少々に短縮されたのです。
なぜ大幅に時間短縮できたのかといえば、60系よりも80系のほうが低床化を実現できたからです。
釈迦に説法ですが、車内床が低ければ低いほど、車いす乗降にかかるエネルギーを省エネ化することが出来ます。
そのような低床化実現で介護タクシー運行の効率化を享受できているにも関わらず、更なる低床化をお願いすることは大変心苦しいのですが、車いす固定用リールのスリム化・金属板取付の見直しを図ることで、あと1㌢・あと3㌢の低床化をPRできないでしょうか。
窓枠拡大化との相乗効果でクリアな視界に大きな期待がもてます。
まとめ
福祉車両のアイポイントがクリアにならない根本的な要因は、マジョリティ向けに開発設計された車両をベースにマイノリティ向けへと手を加えているからだと考えます。
つまり、健常者向けに設計されたボディやシートアレンジをなるべく壊さずにいじらずに、コストを抑えて工程も極力少なくして車いす車両として成立させているのです。
◆8人(健常者)に売れる車づくり
◆2人(障碍者/難病患者)が喜ぶクルマづくり
どちらにリソース(人材・資金)を注ぎ込むかは火を見るよりも明らかです。
しかしそれでも、僭越ながら申し上げたいのです。
ハンディキャップの方の意を決した外出が、1%でも多く満たされるものであってほしい。
隣によりそう人・向かう場所・そこへ連れていく人こそが重要であって、車の利便性・快適性はこれ以上望むべきではないのかもしれない。やりつくした感はあります。
それでも、大切な人と同じ景色を共有することが憚られている現状を改善(カイゼン)していただきたい。
YOUの視点でモノ創りを追求し続けるTOYOTAだからこそ、それが成し遂げられるはずだと願っております。