今回は、
車椅子ユーザーアイポイントの追求/進化
について述べてみます。
介護タクシーを運行する中で、車椅子ユーザーから
「外の景色が見えないなぁ~」
「頭こすった(笑) 少し首傾げないとキツイな、、、」
という声を頂く事があります。
厳密に言えば、そのような声を上げる人はまれで、心の中ではそう感じてはいても口に出してタクシー車内の空気感をざわつかせるよりは心に秘めておこう、、と感じている車椅子ユーザー・ご家族が大半ではないかと個人的に思っています。
まずもって、
僕ら健常者が座するシートからは車外景色が見えない・見にくい という事はほぼあり得ません。
そうですよね?
運転席・助手席しかり、付添席しかり、3列目シートから眺める景色しかり。

これがOKINAWAの海と空だ!! by RUTE58
しかしながら、
改めて介護タクシー車内を観察し、車椅子ユーザー視点に寄り添ってみると、その乗車位置からの目線(アイポイント)は、ドライブを堪能するに至れない何とも悔しい車内設計となっていた事が判明してしまったわけで。
これを解決するにはどうしたらいいんでしょうか。
国土交通省が定める普通乗用車・保安基準規格をクリアしながらも、健常者も車椅子ユーザーも同じ目線で、沖縄の美しい海と空をダイレクトに感じる事が出来るようにドライブを堪能できる福祉専用車両設計としてリリースすべきだと強く思うのですが。
先ずは健常者の皆様へ、車椅子ユーザーから見えている、福祉車両・車内からの風景(アイポイント)を疑似体験頂き、福祉車両の現状を把握してみてください。
※尚、今回述べる福祉車両とはトヨタであればヴォクシー・ノア・エスクァイアの排気量2000cc普通乗用車サイズを対象としています。
現代福祉車両に足りない要素は車椅子ユーザー目線と視点と
写真を撮ってみて驚きました。
「そりゃあ、景色見づらいし、頭もこすっちゃうよなぁ」って。

付き添い席座面と車椅子座面の高さにご注目
画像をご覧の通り、付き添い席(セカンドシート)の左隣が車椅子ユーザーの乗車位置となっています。日産セレナとかは逆パターンで付き添い席が助手席裏・車椅子指定席が運転席裏になっている車両も見かけた事がありますが、
ワンボックスタイプのファミリーカーを福祉車両・車椅子仕様とした車内レイアウトはメーカー問わず、大体こういう風な設計となっています。
付き添い席・座面とスタンダード車いす座面の高さに違いはあるのか
まず、付添席・座面高さを図ってみました。

高さ 約300mm
対して、お隣の車椅子座面は、、、、、

ムムムっ?
おうおう、
よーく見ると、付添席のフロア面より車椅子ユーザー乗車位置フロア面が高いではないか。

高さ50mm
これは盲点というか、気づいているようではっきりとは認識出来ていませんでした。
もう、この時点で、車椅子ユーザーの視点と健常者の視点に50mmの比較差が発生しているわけです。

車椅子座面高さ 430mm
おさらい:
付き添い席 座面高さ300mm
車椅子乗車位置フロア高さ プラス50mm+車椅子座面高さ430mm=480mm
実に、180mmの比較差が発生しているわけです。
んで、その、180mmの差というのは、具体的にどのような見た目(景観)となっているのか。
健常者 付き添い席からの視点(アイポイント)とは
:右側視点

まぁ、このように視界を遮るものはないわけで。
:正面視点

フロントガラスからの視界もクリアに
:右側視点
車椅子ユーザーからの視点(アイポイント)とは
弊社スタンダード車いすを使用して車椅子ユーザーの疑似体験を試みました。
:右側視点

視点上部にボディ天井部が遮ってくる
:正面視点

助手席ヘッドレストと天井部から見える隙間がプチストレスを生む視界となっている
:左側視点

サンバイザーがウザったく感じます。
身長163センチの小柄ボディの私でさえ、スタンダード車いすに乗るとこのような視点になります。
これが身長170センチ以上の車椅子ユーザーだったら…?
アイポイントが車内天井側に近づき、下手をすると、視界の半分以上が車内内装で染まる事になります。
先日、173センチのスタンダード車椅子ユーザーお客様を移送した際、弊社介護タクシー車内天井部に「時々こすれちゃうね(笑)」との爽やかな報告がありました。
介護タクシードライバーからの提案 チャプター1

このフロントガラスの上ライン部分を。。。。
200mm大きくしてこの辺まで拡大するとか。
↓ ↓ ↓
サンバイザー部分までをごそっと削り上げるイメージですね。
この黄色ライン部までフロントガラスが拡大されれば車椅子ユーザーも車外のナイスビューが楽しめるんじゃないでしょうか。(本音はあと100mm拡大望みたいが)
ご覧の通り、目障りな助手席ヘッドレストを外したい所ですが、
後部からの追突時にムチ打ち症状を軽減するための装置でして、外してしまうと、道路運送車両法に引っかかるんですよ(苦笑
あとはですねぇ、
サイドガラス(窓枠)部分の拡大も願いたいですよね。

車椅子ユーザーの通常視点はこちら。何だかウザってぇサイドバイザーと車体ボディですよね
健常者はこのように見えています。
↓ ↓ ↓

大分印象は変わったでしょう?
健常者はこのような視点で何時も車外景色を楽しめているのに、車椅子ユーザーだけが何だか割を食ってるみたいな。
福祉タクシードライバーからの提案 チャプター2

高さ50mmのフロア部分を。。。。
たかが50mm されど50mmなので、削れる部分は削除したい。
とはいえ、この厚みにも意味があって、車椅子後退装置のベルトリールを格納するスペース確保と、車椅子2台目を乗車させる際に、1台目の前輪を助手席前方へ負担なく乗り上げる為の絶妙な傾斜角度とのバランスを考慮してのフロア厚みなわけです(←だと思っています(笑))
次回リリースされる未來の福祉車両・車椅子仕様には、
車椅子後退装置・ベルトリールの更なるコンパクト化とフロア下を深堀り・ベルトリールをビルトインする事で車椅子ユーザー乗車位置のフロア面を全体的に下げる 事も期待したいですね。
最低地上高との兼ね合いもあるので簡単でない事を重々承知しながらも。
もひとつご指摘 まとめの提案
トヨタ側も自社リリースの福祉車両・車椅子仕様では車椅子ユーザーの視点からは景色景観が楽しみにくい というポイントに気づいており、その為のチィルト式車椅子の販売も併せて行っているのですが。。
車椅子ユーザーにとって、車椅子そのものは身体の一部と言っても差し支えないくらい非常に大事なもので、その車椅子生活を余儀なくされた日から本人の身体にフィットさせた特注の車椅子を活用なさる方が大半を占めます。
つまり、
トヨタ側としては、現在市場にリリースしている福祉車両から眺める景観のハンデを、ウェルチェアでカバーしようと試みている筈です。しかし、その働きかけは想定したよりは支持されていないのではないでしょうか。
確かにチィルトさせる事で視点が100mm下がり、景観を楽しめるようにはなったはずですが、車椅子ユーザーの体格や身長も様々ですし、身体にフィットしない車椅子を敢えて購入しよう・活用しようという心理にならないはずなんですね。決して、トヨタ販売のウェルチェアが不良品だと言っているわけでなく。
私の推察ですが、
車椅子ユーザーが求めている事は、ドライブを楽しむ為に専用の車椅子を購入したいわけじゃなく、
自らの脚となっている・自らの身体の一部である・毎日使用している自分の車いすでドライブを楽しみたいと思っているはずなんです。
となれば、
これからの福祉車両に求められる事は、
どのような車椅子形状が乗車しても前方・右側・左側からクリアに景色が眺められる専用設計でなければならない と思っています。
この課題は福祉車両を事業車両とする介護タクシーに限らず、公共交通機関のバス・電車・新幹線・モノレール・飛行機にも通ずるでしょう。
車両製造メーカーは車椅子乗車位置の確保・固定装置・乗降ルートには気を配っていても、車椅子ユーザーがどの目線で景色を眺めているか には着目していないのでは?
どうですか、自動車メーカーの皆様。
そろそろ、健常者向け乗用車をベースに福祉車両としてカスタマイズするんじゃなく、
障がい者車椅子ユーザー目線に立った所からクルマ創りを始めてみては如何でしょうか。