誤解を招きそうなタイトルをあえてチョイスした理由は、
障がい者高齢者への介護タクシー運行を11年以上続けてきて実感する場面が多々あったからなんですね。
例えばある有名な沖縄そば屋さん。入り口には段差5段が連なっています。
「お願いします、車椅子介助を少しだけ手伝ってもらえますか」と行列待ちのお客にヘルプを求めれば期待に応えてくれるやもしれません。
しかし、そのようなヒトのホスピタリティに頼るよりもこの階段5段がスロープ化されていればどんなに良かっただろうと思えてならないんです。
大半の車椅子ユーザーは「美味しいと評判のそば屋だけど手伝ってもらうのは心苦しい…」と思っていますし
周囲の人々は「どうしよう、手伝ったほうがいいのかな…でもやった事ないから不安だし万が一ケガさせたら…」
というような戸惑いの表情を浮かべます。
不特定多数の方へ向けてサービス提供をしている事業者・経営者へ改めてお伝えしたいのは、
バリアフリー設備化を今一度考えてみませんか?
ということなんです。
世界遺産・識名園へ案内したくても…
先日のぞいた識名園です。
琉球国王の別邸ともいわれ、中国からの冊封使をもてなしたとされるナイスビューな庭園がたいへん評判なのですが。。
18世紀ごろの琉球の雰囲気を忠実に再現し披露することこそが観光資源の価値となり、
それに魅せられて世界各国から観光客が押し寄せるわけですが、その設備環境は健常者だけを向いたものです。
本部港ちかくの有名なビーチ。管理事務所には車椅子トイレも完備されています。
車椅子ユーザーが砂浜や海にアクセスするには大人2人以上の力を用いて階段バリアをクリアする必要があります。
宜野湾市にある人気のラーメン店。
入り口段差10センチは電動車いすユーザーの入店を間接的に拒んでいますし、我々介護タクシードライバーのように
外出ガイドに慣れていないとスタンダード車椅子ユーザーの案内すらも難しいです。
さて、世界遺産観光地やら海水浴場やらラーメン店やら述べてきましたが、
何が言いたいかというと、
介助者のスキル・周りの人たちの助けに頼らないバリアフリー設備を最優先することが車椅子ユーザー当事者たちにとって最適で快適な環境だと思うんですね。
世界遺産識名園を例に挙げれば車椅子通行幅700mmのフラット通路で、
海水浴場であれば介助者1人の労力ですむ緩やかなスロープで
飲食店であれば段差レスの入り口スロープ化
これらを強く望みたいんです。
ヒトの善意に頼らなくてもいい 人のお節介を受けなくても移動できるバリアフリー設備をすべてに
「介助した事なくて…」とお断りするのでなくこのように対応くださるのはとても素晴らしい!
でも、やはり、設備(スロープ化)の重要性を感じずにはいられない。
傾斜角度にもよるけど整っていれば介助いらずだし慣れていない人でも労力はそれほど要らないんですよね。
お寺のバリアフリー化望みたい https://t.co/UbkXhZqFqm
— 花城健@かりゆしウェア&革靴野郎 (@gappai2323) November 18, 2019
このブログ投稿のきっかけを与えてくれた(株)ミライロ岸田奈美さんの呟きです。
(株)ミライロといえば、バリア(障害)をバリュー(価値)に変える信念のもとに障がい者当事者らと健常者たちがユニバーサル社会実現に向けて
活動する会社で、岸田奈美さん投稿動画をリツイートさせていただいたのですが、
〝お坊さんの危なっかしい階段介助〟
がどうしても気にかかったんです。
階段介助のアプローチはいろいろあって、お坊さんたちの介助も決して間違ってもいないのですが、呼吸が合わないことの身体のふらつきは車椅子ユーザー当事者の不安を掻き立ててしまうものなんですね。
私のリピーター車椅子ユーザーもこう言っていました
良かれと思ってやってくれているだけに断りづらいし何か複雑…
このお寺の場合、階段の一部をスロープ化すれば大人1人の労力で移動できますし、電動車いすユーザーやベビーカーや福祉バギーユーザーも快適に行き来できるわけです。
何より、スロープがあれば、車椅子ユーザー本人の安心感に潤いを与えるのです。
大型商業施設がもたらす障がい者への恩恵はハードの潤い
観光立県・沖縄でも大型商業施設の乱立で「らしさ」が失われているという声が聞こえ、どこも似たり寄ったりなデザインで箱モノを建てまくり、
本土企業ばかりが参入して沖縄のおじぃおばぁが経営してきた個人商店が廃れて寂しいばかり…
という意見もちらほら聞こえ、確かにそうだなぁと思うのですが、
介助いらずで店舗へ入店出来るフラット床面
ボタンPUSHで高層階への移動もラクなエレベーターが標準装備
手すり付き・オストメイト設備・LGBT配慮も伺える清潔な多目的トイレが必ずある
この安心感と利便性をしっかり提供している視点から見れば、これほど障がい者にとって快適な施設もないだろうなと思うのです。
これからも車椅子ユーザーの外出には介助者をつけなければならないのか
車椅子ユーザー1人で外出や旅や観光を成し遂げたいというニーズはあるんですね。
車椅子を押すくらいしかできない家族と水入らずで外出したいというニーズもあります。
ただ、外出先バリアがまだまだ多い現状だなと痛感します。
バリアフリー!! ユニバーサルデザイン!!という言葉は目の前で飛び交っていても現実の仕上がりはそうでもない。
道路にしてもそうです。
車椅子転倒をにおわせる凸凹路面や縁石、段差があちこちにあります。
まるで「一人で外出するなよ! 誰か介助者つけないと知らんからな、責任取れんぞ!!」と訴えているかのようです。
新規店舗ができても車椅子ユーザーの入店をそもそも想定していないデザインが見られます。
車椅子ユーザーの利用を綿密にリサーチしないユニバーサルデザインタクシーが日本全国で乗車拒否をしている現状です。
「どうせ来ないでしょ」と思っているのか「来られたら対応に困る」と思っているのか思考にすら浮かばないのか。
バリアフリーの優先順位はヒトからよりモノからではないのか
バリアフリーとは
対象者である障がい者を含む高齢者等が、社会生活に参加する上で生活の支障となる物理的な障害や、精神的な障壁を取り除くための施策、若しくは具体的に障害を取り除いた事物および状態を指す用語である。
「設備やシステムが、広く障害者や高齢者などに対応可能であること」を指して、英語では「アクセシビリティ」(accessibility)と呼ぶ。それに対して、「バリアフリー(barrier free)」は、建物の段差を取り除くことなどのみを示す。
引用元:ウィキペディア
改めてウィキってみると至極当然のことを指し示していました。
私自身が、バリアフリー=健常者からのホスピタリティという方程式に囚われすぎていたようです。
この日本では車椅子ユーザーのガイドに慣れていない方が大半を占めているわけで、慣れるまでにはその現場で相応の時間と修練を積み重ねばなりません。
その人材育成を待つより段差をなくしスロープを整え階段昇降機やエレベーターを設置することのほうがスピーディーに安定的にバリアフリーを提供できるのです。
ヒトが提供するホスピタリティ&介助スキルはバラつきがあります。
設備が提供するバリアフリーはブレないのです。
もちろん、設備に投じる予算・お金という問題が絡んできますが、
大工仕事やDIYに強い人はあなたの周りにいませんか。
協力を仰いでコスパの高いベニヤ板スロープは設置できないでしょうか。
キチンと調べてみれば、導入コストを抑えつつ利便性の高い設備環境を整えるための助成制度・補助金はあるものです。
【募集締切】商店街等店舗改修工事支援事業補助金
※とっくに締め切ってるけど…(苦笑)一応ね、こういうのあるんだよって
ノンバリアフリー店舗をバリアフリーさせるために用意されるお金(事業予算)はもっとあっていいんじゃないか。
御贔屓にしているお客様の向こうには入りたくても入れない車椅子ユーザーがいることに思いを馳せてほしいものです。
もう少しだけ、どうにかなりませんか。