まじゅんとは、うちな~ぐち(沖縄の言葉)で「一緒に・共に」を指します。

シンプル過ぎて伝わってきます。浦添市安波茶交差点近く
障がい者も健常者も分け隔てなく、 共に仕事に汗を流し、共に笑い合い、介護食を通して繋がる全ての人々と一緒に歩んで行けたら……。
そんな思いが詰まったまじゅんは開業当初、嚥下(食べ物を飲み込む)能力が低下した方へスープのみを提供する予定であったものの、ムース食(食材をミキサーで溶かし料理として成形された)も併せて行こうという宮里護佐丸(ぐさまる)代表の提言により生まれた
食の楽しみと喜びを配達する沖縄でも極めて少ない介護食専門のお店なのです。
きっかけは沖縄観光依頼を承る過程の中で
介護タクシーめぐりへ沖縄観光ドライブをご指名下さったお客様のお子様がペースト食を日常的に食されており、沖縄旅行の際は、「現地でしか食べられない食材を使ったペースト食を提供する飲食店はあるのかどうか」という問い合わせを受け、検索をかけてみるとヒットしたのが介護食宅配専門まじゅんだったのです。
私のお客様にも流動食を日常とされる方もいる事から、介護食を提供する事業者とは一体どのような思いで活動されているのか関心が湧いてきましてお尋ねした次第。
障がい者自立支援設立を目指してはじめの一歩
宮里護佐丸代表は以前、障がい者支援施設で勤務していた経験から、健常者よりも就労に結び付きにくい障がい者の実情を何とかしたい、、という思いを秘めていて、その足掛かりとしてこの介護食宅配専門店を立ち上げられたとの事。
地元・浦添市の独創性ビジネス事業者として最優秀賞を受賞したり、地元新聞各社に取材を申し込まれたり、嚥下力低下の患者を抱える病院・介護施設入居者へ提供する為に連携する医師・言語聴覚士・管理栄養士・ケアマネージャーとのネットワークを築いていたり、そして、私の取材依頼を受けたりと(笑)、
社会からの認知や浸透性は大きいものでは?と伺ってみたのだが、宮里代表曰くまだまだ認知率に乏しいそうな。
介護食として成立させる試行錯誤を1年以上
宮里護佐丸代表の奥様・宮里園子さんは福祉施設や介護職での勤務経験は一切なく、主婦業を10年以上務め宮里家を支えてきたのですが、護佐丸代表からの熱烈な打診を受けてまじゅんの開業を決意されたそう。
ご自分でベーコンやヨーグルト、味噌などを手作りする程の料理好きである事も講じて、意を決してみたものの、トロミ状から料理のカタチとして成形する過程で水分量・ゲル化剤配合のバランス調整にものすごく苦労なさったそうです。人参の色・ほうれん草の色などを再現するにあたって水分・ゲル化剤配合量の調整が肝になり、その試行錯誤に投じる熱量は私のようなポークたまごしか作れない初老にとって首を垂れるしか敬意を表せないのです。
園子さんのこだわりで、「月曜日はしょうが焼き・火曜日はとうふちゃんぷる~、、、と型にはまった料理提供はお客様もマンネリするだろうから、その日その日で違ったメニューを提供できるように工夫しています」
20種類の食材で作り上げるおかず1品とスープ・デザートが付いて1食¥700。
スープも13品 デザートは8品と幅広い品数を揃えながらも、食のバリアフリーに掛ける思いは強く、沖縄観光にいらっしゃる旅行者に「沖縄県民が親しんでいる家庭料理の介護食」を提供したいと新たなメニュー開拓にも余念がない。
そんな最中(どんな最中)、沖縄県民が愛している「そうめんちゃんぷる~」のムース食を試食させて頂けました。

食材の色合いが見事に引き立っております。

トロミが付きながらも食としてのカタチが整えられています。
介護食の前提として、「舌で潰せる事が出来る」「食道を通り抜けるスピードが水よりも早くならないようにトロミを付ける必要がある」という事。
まじゅんがこだわったのはそこの前提をクリアしながらも見て美味しいと感じる視覚的感覚を揺さぶりたい・食の本来の楽しみ喜びを提供したい
そんな熱量のこもったそ~めんちゃんぷる~を食してみると思っていたよりも食感がしっかりあるなという印象。
しかしながら、前提通りに舌で容易に潰せる事が出来て味付けも薄味でしたが食材本来の旨味が引き出されていて美味しい。
まぁ、タクシードライバーという職業柄、外食が主で濃い味付けばかり食しているので味覚が贅沢になっている私のバカ舌には身を正される思いでありました。
流動食でしょうがないよね、を、変えたい

料理好きな園子さんと宮里護佐丸代表(夫)
宅配エリアは事業所を置く浦添市を拠点として、西原市・宜野湾市・那覇市(一部対象外)の4市。
真空パックでの配達では沖縄県内全域で時折、北部地域からも注文を請け負う事もあるそう。
取材をさせて頂く中で宮里夫婦の一番の笑顔を垣間見れたのは、職業能力開発校の障がい者訓練委託先として認定されたまじゅんで3か月間の受け入れを行った生徒が無事に就職を勝ち取ったお話を伺った時。
その時のエピソードや試行錯誤の日々をつづったまじゅんチャレンジブログから是非ご覧ください。
1食¥700と決して安くはない介護食ですが、プライス以上の愛情・熱意そして人間本来の欲求「食する事の楽しさ」を呼び覚ましてくれる価値がふんだんに贅沢に盛り込まれているのです。
手間暇と試行錯誤の日々を鑑みれば、納得のプライスではないでしょうか。
今回の取材を通して、食事を頂ける当たり前 の幸せを深く考えさせられた想いです。