青森市・水戸市・広島市 3市のタクシー会社が運営するユニバーサルデザインタクシー(以下UDタクシー)に乗降介助料金を設定していたことが「差別的扱い」になるとして、国土交通省から撤回を求める指導があったようです。
このニュースを見たときに、
と率直に思ったんですよ。
車椅子ユーザーに対して安全と快適乗降を約束する労力に、「無報酬でやり続けろ それこそが差別のないユニバーサル社会だ」 という論理はおかしいと思いませんか?
視覚/聴覚/精神/発達/身体障碍者を14年間運び続けている私が、僭越ながら国土交通省と地方運輸局にクレームを入れた利用者らに提言します。
一般タクシー乗務員にも介助料金徴収を認めないと、車椅子ユーザーを運ばないお飾りUDタクシーが走り続けることになりますよ。
一般タクシー乗務員の本音は、タダで乗降介助なんてやりたくない
大前提として、UDタクシー(特にジャパンタクシー)の乗降拒否が起きる要因は、乗降設備があまりにも残念すぎるからなんです。
乗務員のホスピタリティうんぬんという範疇を超えて、扱いづらいからやる気が起きないのですね。
※下記動画を1分見れば、すぐに理解できるでしょう
リリース初期の不便を改善した改良型車両で、スムーズな乗降手順を身体にたたき込んでいるベテラン乗務員でさえ、作業完了までに3:40秒もかかっています。
久しぶりに見ても絶句する乗降作業の手数と車内設計ですね。。。。
さて、これだけの手間に対して割増/介助料金を徴収してはならないとするなら、だれがやる気になるでしょうか。
例えば炎天下、使い勝手の悪いUD車両で汗だくになりながら乗降介助を5分~10分かけて報酬ゼロ円が当たり前って、心が折れますよね。
ユニバーサルドライバー研修を受けた乗務員の労働の対価は報酬で報いるべき、そう思います。
そもそも、車椅子ユーザーの乗降を想定していない時代に整備された法律は、多様性を重んじる令和バージョンに変えるべきだとも感じるんですね。
対価を頂くのは差別なのか 道路運送法を令和バージョンに改定すべき
国土交通省(当該運輸局)は、道路運送法:第九条の三の二に基づいて、今回の3市タクシー会社に割増料金の撤回・指導を行ったようです。
二 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものでないこと。
引用元;道路運送法|e-Gove法令検索
今回の事例と道路運送法の解釈を照らし合わせると、障碍者に対して割増料金を設定することは差別です というものです。
これって差別なのでしょうか。
むしろ、障碍者を下に見ている差別ではないでしょうか。
現場のタクシー乗務員が
というようなやる気を持てる仕組みにしなければ、体力が衰えていく高齢者と若手ドライバーはますます車いすユーザーを避けてしまいます。
法律でそうなってるから仕方ないよね、で終わらせるんじゃなくて、時代の変化に合わせた柔軟な対応を求めたいところです。
UDタクシーの乗降介助料金はどのように設定すべき?
考えられる対策としては、下記2つのいずれかが妥当ではないでしょうか。
◆UDタクシーが乗客の目の前に着いてからメーター稼働させ、降車完了でメーターストップ
◆乗降介助1回/¥500以下で設定する
個人的には2番目の¥500をまるごと乗務員の取り分にすれば、モチベーション向上で乗車拒否減少にもつながることでしょう。
まぁ、1番目のほうが分かりやすくて乗務員・乗客も納得しやすいのかなとも感じますが。
UDタクシー乗降拒否を減らすためには障害者らの意識改革も求めたい
介護タクシーという仕事に携わって驚いたことですが、障碍者が障碍者をいじめる現実があります。
また、自身が弱者であることをことさら強調したり遠回しに匂わせて、サービス料金を値切ろうとしたり1円でも安く済ませるための計らいに熱心な障害者がいるのも事実です。
もちろん、ごく一部ですよ。
今回の乗降拒否問題が発覚したのは利用者が運輸局に連絡したからなのですが、作業工数が多い乗降介助に対して割増料金を設定することが許せない という考えを改めて頂きたいのです。
使い勝手の悪すぎるUD車両で乗降介助を1秒でもはやく終わらせるためには場数を踏むことが何よりも重要です。
場数をこなすには、労働の対価がセットでなければ意欲もわいてきません。
UDタクシー乗務員が乗降拒否する根底には、このような心理があるからだと介護タクシー乗務員は思うのです。
まとめ
UDタクシーの車両設計や付帯設備にクレームを入れても乗降介助の作業時間が早く終わるわけではありません。
ユニバーサルタクシー認定第一号の日産はNV200の生産を2021年3月末で終了しました。
トヨタはJapanタクシーの汚名を返上する新たなUDタクシー創りに意気込んでいるようにも見えません。
ならば、今あるUDタクシーを有効活用する視点で、乗務員の乗降意欲を高めるための道路運送法改正に着手すべきではないでしょうか。
自由度高いピンポイント外出をお手伝いする介護タクシーに、UDタクシーという選択肢が加われば、車椅子ユーザーの人生はもっと楽しくなるはずですよ。