介護タクシー送迎や貸切観光の見積依頼を受けて提示すると音沙汰なくなったり、「安くなりませんか?」と懇願されたり「障がい者からそんなにお金を取るのか?」と半ギレされることがあります。
介護タクシー運行とは、その日の人件費とガソリン代だけ稼げればよいのでしょうか。
外出ハンデを抱える障がい者高齢者から正当な料金をいただく行為は、弱者からお金を巻き上げるひどいことなんでしょうか。
平成時代の大企業の奮闘により高品質・低価格サービスの提供は消費者に驚きと感動を与えたと同時に、
「安くならないのか」
「安くあるべきではないのか」
というディスカウント魂を植え付けたのではないかと思っています。
気軽でお手軽なサービスは
気軽にお手軽に捨てられるサービスにもなりえるんですよ。
介護タクシー料金が高い理由/安くならない理由とは
人間(乗務員)が人間(乗客)の安全を護っているから
近年、高齢者の運転操作ミスや突発的な体調不具合による痛ましい事故がニュースで取り上げられています。
人間が車を操り、その目的を叶えるために必要な移動や物流を担う行為は決して簡単なコトではありません。私はそう思っています。
モノや人を運ぶ…この事象だけを捉えれば簡単に見えるでしょう。
自動車運転免許取得は誰でもできますし医師免許を取得するよりもはるかにハードルは低いですから。
しかしながら、
- 側道から飛び出てくるかもしれない子供・動物に気を配り
- 最短経路で目的地にたどり着くための移動ルートを把握し
- 不測の事態(工事・事故・災害)が起きても迂回ルートで目的を達成し
- 視界不良な悪天候・夜間時でも乗客/貨物へのあたりまえの安全を約束する
2019年現在においても、これらの行為はAIがまかなえるものではなく、人間にしか為しえない生業です。
これらの行為を軽んじてはならないでしょう。
介護タクシー運行/介助に当てはめてみると、路面凸凹や歩道縁石を通行する際のブレーキング・アクセルワークは非常に気を使います。
健常者を送迎している感覚でアクセル・ブレーキを行うと、車内で車いすが暴れたりユーザーの上半身が運転席側へ倒れてきます。
※想像以上に車いすは揺れます
急な飛び出しや快適ドライブを提供するためにハンドル・ペダル操作をミリ単位で行うことに全神経を注いでいます。
タクシーを降りた後・乗る前・外出先での身体介助もおこなう介護タクシー乗務員は外出先環境を適切にみきわめて乗客が快適に過ごせる配慮・段取りを行います。
お客様だけの外出/観光ドライブを演出して喜んでいただくために
お客様の求める外出目的/内容が同じであることなどありえません。
11年以上運行してきて断言できます。
身体になるべく負担をかけないための車椅子選びやレンタル機材の提供、ノンバリアフリー住宅での身体介助・乗り越えるべき環境、配慮など。
沖縄観光に至ってもお客様ごとの「行きたい観光地」「叶えたい体験」「買いたいモノ・食べたい沖縄料理」があります。
それらを達成するためには外出先がバリアフリー環境であるかどうかもキモになってきます。
特にトイレ問題ですね。
11年前に比べて多目的トイレの設備環境が良くなってきましたが、コンビニに駆け込めば・公園に行けばそこに必ずバリアフリートイレがある…ものではありません。
飲食店にはトイレがありますね。
しかし、障がい者も使えるトイレか?と言われれば2019年現在においても不足している状況です。
お客様だけの沖縄観光を成功させるために・スムーズに滞りなく完遂させるために私はタクシーを50㌔以上走らせてリサーチ・取材することもあります。
バリアフリー未成熟社会で暮らしている障がい者高齢者が意を決して沖縄観光にのぞむ背景を想像すれば、近所のスーパーに行くような手軽さ・気軽さのアクションでないことはすぐにわかることです。
貴重なお金を投じて沖縄に来てよかった・心が癒された・また来たい と感じて頂くためには過ごしている時間中、ストレスや不安を感じさせるようなことがあってはなりません。
そのような配慮は介護タクシーとして当たり前の配慮だと思っていますし、お客様ごとの観光プランを練り上げるには企画段階から観光当日までに相応の手間暇がどうしてもかかります。
それでも介護タクシー料金は安くあるべきなんでしょうか。
観光・旅行・移動の安さにこだわるならそれなりのサービスを噛みしめるべし
土地勘のない外出先でも運転できるドライバーを一人用意すれば、介護タクシー貸切料金の半額以下で移動できる福祉レンタカーという手段があります。
カーナビは標準装備ですしスマホでググればある程度の情報を手に入れることが可能ですよね。
家族水入らずでワイワイガヤガヤ移動しながら時に道を間違える…ことも旅の醍醐味だと捉えられるならそれに越したことはありません。
社会福祉協議会・所有の福祉車両レンタルを活用すればガソリン代負担のみで通院・お買い物・その他外出をおこなうことができます。運賃・介助料金・機材レンタル料金を支払うことの料金ギャップに驚くのではないでしょうか。
しかしながら申し上げたいのです。
便利で快適な移動サービスは〝安くあるべき〟思考からの脱却を。
その旅や外出を成功させるために脳みそに汗をながすプランナーがいるのです。
その観光を楽しんで頂くために関連事業者と連携しながら段取りしている演出家がいるのです。
その土地の文化や歴史を肌で感じながら自分の言葉で語ることができるおせっかい野郎がガイドするのです。
お客様だけの目的地へピンポイント移送と介助をオーダーメイド提供する介護タクシーサービスは、【便利・快適・安全】という当たり前を約束するためにどうしてもコストがかかってしまいます。
料金だけに焦点を当てるのではなく、「抱えていた問題は解決されたのか」「どんな初体験が得られたのか」「非日常は満たされたのか」でサービスをジャッジできないものでしょうか。