「たぶん、これが最期の外出になると思うんです…」
その衝撃の一言から半年後にふたたび介護タクシー送迎を賜ることができたので、私はほっと胸をなでおろしました。
介護施設に入居すると、どうしても以前のような自由な外出が難しくなります。
いま外出したいと思ったときに誰の手も借りずに自宅を出ることができて
自らの足で歩き自らの意思で交通手段をチョイスできて
青い空の下でも土砂降りの雨でも大地をふみしめることができて
会いたいと思った人に出会い
帰りたいと思ったときに帰ることができる
これらの日常は幸せなことなのですが、あまりにも当たり前すぎて簡単すぎて、いつのまにやら幸せとすら感じなくなるものです。
ことの経緯を振り返ってみます。
お客様は、会いたい人の自宅に伺う前にスマホで確認を取りました。するとその方は、デイサービスに参加されていることが分かり、急遽予定を変更してデイサービス事業所へ到着。
私にはこの偶然がもたらした出会いの背景にあるお客様ごとの濃密な人生はわかりません。
しかし、ご友人が補助ステップをかけあがってハグをしてキスをするさまを見ると、特別な出会いなんだろうなという確信を得るのです。
ここ最近涙腺のパッキンがゆるみがちで透明な液体が簡単にこみあげてくるようになりました。
次なる目的地は家族が住む自宅です。
そのご家族も車いすユーザーでした。ノンバリアフリー自宅の玄関前階段や小あがり段差の物理的バリアが大きく立ちはだかるので、お客様が乗車している介護タクシー車両付近まで簡単に駆け寄ることはできません。
せめてベランダごしから5メートル向こうの介護タクシー車内にいるお客様と顔を合わせて束の間の出会いを楽しんでもらえないかと考えました。しかし、お互いの目線位置にベランダ木材がかぶってしまうので、お互いの顔が見えないのです。
なんてこったい。
久々にマンパワーの階段介助か?体重を伺うと80㌔。玄関前階段が3つしかないとはいえ、安全性を考慮すれば無理をするべきではないと判断して断念しました。
しかし、冷静になって考えれば、お客様を介護タクシー車内から降ろしてベランダわきまで移動介助すればそれで済む話じゃありませんか。
その提案に至るまでに5分以上かかってしまいました。
精進が足りませんね。
次なる目的地もご家族が住むご自宅へ。
本日のご利用は「母をたずねて三千里」ならぬ『家族と友をたずねて探訪記』のようです。
当たり前だった日常の外出と出会いが当たり前でなくなる。このお仕事にたずさわるとその瞬間を何度も目の当たりにします。
そして、その心情の吐露をご本人から聞くことができます。
外出させたくても車いす介助に慣れていないのでためらってしまう。
自家用車では車いすユーザーとなった家族の外出送迎が難しくなった。
段差や階段や坂道の車いすガイドをやったことがないので外遊びに連れていけない。
そのような方のための介護タクシーなのです。いつでもご相談ください。
サポトヨから購入した折り畳み式補助ステップも外出先で大活躍しております。付き添いご家族の高齢者やリウマチ患者となると、38センチ高さが大きなバリアとなって立ちふさがります。
介護タクシー運行と乗降において、物理的ストレスを与えないよう、設備は充実させています。
乗りやすい
乗り心地よい
快適
便利
ラクラク
疲れない
楽しい
面白い
嬉しい
少しウケる
介護タクシーめぐりはこれらをさりげなく提供します。
『家族と友をたずねて探訪記』のような介護タクシー運行は、予定時間を少し超えてお客様入居の介護施設へ安全に戻ることができました。
楽しい時間はあっという間です。
それぞれの想い出の地でお客様は外出とおしゃべりを楽しんでおりました。「会いたかった人に会うことができた」と喜んでいただきました。
営業所へ戻る道中、ブルーシールのアイスコーヒーを飲みながら私の心はずーっと満たされていました。