介護タクシードライバーが福祉車両に講釈垂れるシリーズ・締めのブログ。
車両外観の追求
車椅子ユーザーアイポイントの追求
乗降装置の標準化
について述べていきます。
福祉車両と謳うからには、高齢者・障がい者らにとって、普通乗用車よりも乗降性に関して利便性ある設計となっていなければいけないんじゃないか?と、相も変わらず思うわけです。
さて、前回・前々回、
カッコいい外観、 車椅子ユーザーも景色楽しませろと、次世代に求めたい福祉車両への在り方を私なりに述べさせてもらいましたが、今回の内容がある意味最重要かも。
何故なら、健常者の健脚が前提で設計されたフロア面の高いワンボックスカー福祉車両は、下肢筋力の弱まった高齢者や下肢 上肢にハンデのある片麻痺・リウマチを抱える障がい者らにとって、補助ステップ無しでは乗降が不可能に近いものになるからです。
クルマに乗る事が出来なければ当然、移動が成り立たないわけで。移動が成り立たないクルマなんて金属資源の無駄使い的ディスプレイ専用プラモデル。
イングリッシュでいうMOTTAINAI ってなもんです。
スライドドア連動補助ステップの重要性とは
11年の運行と介助を通して確信している思いを改めて申し上げ候。
運転席側 乗降フロア高さ 380mm
助手席側 乗降フロア高さ 380mm 480mm
弊社介護タクシー車両:ZRR80Wボクシーを参考例として述べていきます。しかしながらワンボックスタイプの福祉車両は大体このような構造になっていますので、そこを踏まえて読み進めて頂けたらと思います。
関節の曲げ伸ばし領域が健常者よりも制限される片麻痺・リウマチの方々は、これらの高さをワンステップでクリアする運動力を持ち合わせておりません。ご覧のような踏み台を活用しなければ、ワンボックスタイプの福祉車両への乗降はかなり厳しいものがあります。
といいますか、40のオッサンともなってくると、乗降高さ380mmが何だかうっとおしいと思えてきていまして、
助手席側から480mmの高さをワンステップで乗り超えるとなると、それなりに気構えて望まないといけない気がしてくるわけでして
そんな初老オッサンのツイートはともかく、
同様に、下肢筋力が弱まり、股関節・ひざ関節に難を抱える高齢者も例外ではなく、この高さに対する煩わしさというのは心の中に秘めているはずなんですね。
体力・勢い力 共にエナジー溢れる10代~30代なら、高さ380mmから地面へ降りる事なんて造作も無い所業なわけでして、車へ乗り込む・車から降りる←この動作を行う前にいちいち恐怖感を抱かず一抹の恐怖感を覚えず警戒心を持たずサラッとこなしていけるわけなんですが、
40代・50代・60代・70代と年齢を重ねるごとに、この高さに対する恐怖心はジワリと増していくんですね。
どれだけの想像力と共感力と福祉魂をもって寄り添えるか
以前、観光バリアフリーセミナーを受講した際、高齢者の上肢 下肢状態を疑似体験する貴重な機会がありました。その疑似体験の内容とは、足首とひざ関節・肘 それぞれに1キロのウエイトを巻き付けて階段や通路を歩行してみるというもの。
感想としては、段差をクリアする際に、「何だかやりづらい・動きが渋い・制限がかかってイライラする(笑)」という実感を抱きました。通常の歩行も、脚がズシッと重たく感じてキビキビとした歩行スピードには至れなかった。
障がい者・高齢者らはこのような日常を送っているわけです。
「そうならないようにリハビリ・筋トレをコツコツやって少しでも物理的障害をクリアできるように頑張るべきなんじゃないの?」
「運動を怠けているから・律する心を持っていないからそうなったんでしょ?ある種自業自得なんじゃないの?」
仰る通りでもありましょうが、しかしながらそれは、現場と人生の現実を知らない方の遠吠え的理想論でして、そのような予防的運動を行っていようがいまいが、老いていくという現実はこちらの想像以上に重くのしかかるものです。
予期せぬ老い・予期せぬ障がい
そのような人生の不条理と壁を乗り越えて、笑顔の奥にある葛藤を見せまいと日常を送るお客様を何人と見てきました。
このような実情を目の当たりにした時、ワンボックスタイプの福祉車両には、車椅子ユーザーの乗降性だけにフォーカスするのではなく、車椅子は常用していないけれども運動能力・筋力・領域に制限がある他の障がい者、高齢者の乗降にも目を向けて車両設計を施すべきだと痛感するんですね。
それが、スライドアと連動する補助ステップ設置の標準化 という訴求に繋がるわけなんですが。
何故、踏み台でなくスライドドア連動 補助ステップなのか
その方が見た目にも機能的にもスマートだから。
これに尽きますかね(笑) うん、伝わらないですね、 もうちょっとかみ砕きましょう。
高齢者や障がい者をシートへ乗車させる際に、踏み台を活用して乗降してもらうわけですが、過去に何度か、転倒事故に繋がるようなヒヤリハットが起きた事がありました。
画像の踏み台(高さ230mm)は、ホームセンターで販売されているやつに滑り止めテープを貼りつけ、なおかつ、足を踏み外さないように。。という意図で、視覚的にも映える足形の黄色スプレーペイントを施したもの。この方法がコストを限りなく抑えられて(¥2,000以下)乗降サポートを実現する形であるのですが、
このような配慮をもってしても、高齢者・障がい者のお客様は、踏み台の端っこに足を乗せてしまう事があります。事前に「黄色の場所に足を置いてくださいね~」と口頭で誘導してもポイントからズレる方はズレます(笑)確率でいえば、20回に1回という頻度でしょうか。
勿論、そのような万が一の転倒に備えてドライバーはお客様の背後に絶妙な距離感で寄り添う必要があります。現に私もそうしております。
このようなヒヤリハット現場を目の当たりにしてくると、踏み台の取り外しが容易だからこそ起こりえる転倒発生リスクだなとも思えるわけで、ならば、車両ボディと一体化したスライドドア開閉に連動する補助ステップを活用してもらう方が、お客様の転倒事故発生リスクを限りなくゼロに近づけられるんじゃないかと思えてくるわけです。
補助ステップの端っこを踏んで車がひっくり返るって事は10000%無いはずですからね(笑)
さて、スライドドア開閉と連動する補助ステップとはどのようなものなのか。
なんと!!
絶対、こっちの方がスマートでしょ。
バックドアを開けて踏み台を取り出して乗降場所に設置する っていう手間を運ぶより、スライドドアが開いた瞬間に滑らかに飛び出るこちらの方がスマート。
しかも、スライドドア開口部幅いっぱいの720mmステップなのでお客様目線で言えば足を踏み外す心配もほとんどなしで安心感も頂けるでしょう。
どうやら110キロ以上の負荷には耐えられないようなので乗降するお客様のウェイトに気を配る必要はありますが(苦笑)
販売チャネル・グループ会社の複雑さにユーザーはたらい回し
以上の経緯を鑑みて、リサーチを重ねた結果、モデリスタのスライドドア連動補助ステップと乗降を助けるハンドレール(運転席側・助手席側両方)の後付けを決意したのですが、まぁ、めんどくさいですよ(笑)
運行の合間を拭ってアクションした私の歴史をご覧いただきたい。
弊社介護タクシー車両がボクシーなので、販売会社のネッツ店で見積もり・取付依頼を行うと店内で20分近く待たされた。
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モデリスタはトヨタグループ会社とは言えど、このような補助ステップ後付けを行った経験や私のような問い合わせを行ったものはいなかったらしく、受付奥の事務所で戸惑う動きが見られる
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私の本音で言えば助手席側よりも運転席側に取り付けたかったので、その旨を問い合わせると、「部品共販部がある店舗へお客様の方で直接問い合わせてもらえますか?取り付けに関しては承れますので」と促され、見積書を片手にトヨタ部品共販部 中部店へ訪れた
※部品共販部店舗に併設しているトヨタ沖縄で取り付けて貰おうと考えていた
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部品共販部事務所でもこのような問い合わせに慣れていないスタッフのあたふたする動きを目の当たりにしながら、結果として、40分以上待たされる(アポなしで行った事を考慮して、こちらも多少は待つ必要があると感じたので)
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ネッツ店で受け取った見積もりでは承れないらしく、部品取り付け可能かどうかも含めて見積もりを改めて提示するとの事でその日は引き取った。
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運転席側には取り付けられない事がわかり、内金を入れて貰わないと部品発注(補助ステップ・乗降口ハンドレール右 左)が出来ないとの事で店舗へ来てほしいと連絡を受けた
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ネッツ店との見積もりは¥18,000の開きがあったが、もう何だかめんどくさくなったので内金ぶち込んで一日も早い取付に向かって事を進めている(←ブログ執筆現在ここ)
世界の大企業でもあるトヨタともなると、グループ会社・関連企業含めて何十社とあり、正直、ユーザーとしてはこの車を買うには・この部品を取り付けるには何処を尋ねたらいいか非常にわかりづらく、「あそこで尋ねてください」「申し訳ないですが〇〇へ直接聞いて頂いた方が早いかと…」「少々お待ちください(30分以上)」とたらい回しにされてしまうわけです。
何だか、お役所の申請みたいですね。
手続きの簡素化を強く求めたい所です。
車評論家程の知識見識を持ち合わせていないので、業界の裏腹は知る由もないのですが、私の率直な印象としては、グループ会社の連携・販売商品に関する知識、意識の共有は成されていないんだなと強く感じました。企業を育てるって大変なんでしょう。
介護タクシービジネスだからこそこだわるべき設備投資への決断
以上のような、すったもんだの経緯を踏まえながら(踏まえたから?w)、それでもやはり、ワンボックスタイプの福祉車両には乗降ステップの標準装備を製造メーカーには求めたいのです。
障がい者・高齢者のお客様から見れば、付いていて邪魔な設備だな とはならないわけですから。
福祉車両を利用する人・購入する人は、移動に制約のある障がい者・高齢者なわけですから、お客様からの申し出があってから取り付けに動くのではなく、その対象のお客様の特性を踏まえた福祉専用車両として既に整えて置くべきだと思うんですね。
トータルで35万ほどの設備投資となりましたが、
お客様が快適にドライブや移動を楽しむ為・それを実現する為に起こりうる事故発生リスクを軽減できるパーツであれば、そこに投じるお金は惜しまない様にしたいです。
その決断を躊躇なく行えるように頑張って稼ぎ続けたいと思っとります。