ピークを過ぎましたが、Twitter界隈で炎上している件について。
上場企業の役員が「お客に道を聞くタクシードライバーは提供価値を下げているから、尋ねる毎に運賃から1割引きしろ」と呟いて
RT.コメントの嵐が巻き起こっているようです。
タクシー運転手は、お客さんに道を一回聞くごとに、タクシー料金を1割ずつくらい割り引くべき。タクシーは移動手段なだけじゃなく、乗ってる間の「集中時間」を買っているんだよ。道を聞く時点で、その提供価値の品質を下げていることを分かれよ! https://t.co/D0XqzcYjlk
— 田端 信太郎 (@tabbata) 2018年1月13日
それに対して、田端氏への辛辣なコメントが多数を占めていますね。
タクシーに今まで無かった付加価値要求して無意味にハードル上げるの止めましょう。
集中時間が欲しいのなら、運転手付きの車自分で所有して乗ると良いです。— Koji (@cozy_bridge) 2018年1月14日
こんにちは。
一般的な流しのタクシーは、どんな人かも分からない客を乗せその場で行き先を聞き、安全に連れて行くのが仕事です。どんな人が乗車するかも分からない中、様々な防衛手段を各自とっています。
一般タクシー業以上のものをお求めなら、ぜひハイヤーや専属運転手をご利用下さい。— 霧香 (@kirika_666) 2018年1月13日
「集中時間」は売ってない、顧客の輸送を売ってる。
仮に「集中時間」が重要な付加価値であれば、これを提供できないタクシーが市場原理により淘汰されるので、田端氏が一々口を挟むことではない。
「僕が欲しいものは提供されるべき!なぜなら僕が欲しいから!」というのはお子様の言い分。— すごく眠い、最近。 (@ivorygrin) 2018年1月14日
言いたい事は分からなくもないが、自分の想定してたルートを通らないと「いつもと違う!なんでだよ!」っていう客もいるしね。
それと、タクシーはあくまで移動手段の一つてあって、そこに「集中時間を買ってる」とかいうのは個人の価値観だから、それを押し付けるような発言はよろしくないな。
— 大王 (@daio31) 2018年1月15日
ここで田端氏の意見に同調するとかしないとか、Twitterコメンテーター達の意見が正しいとか
そんな事を述べるつもりはありません。
そんな事より、
今回の件に限らず、私のお客様からも「以前使った介護タクシードライバーも一般タクシー運転手も道を案外知らないんだよね」という実体験をつい先日伺った次第でありまして、また、この手の話は時折耳にするわけでありまして、
どうやらこれは全国のタクシー業界で奮発している日常なのでは?とも思えてきたんですよ。
日常のルーティーンに活力を見いだせないタクシードライバー
平成18年に介護タクシードライバーとしてデビューしたものの、私、それ以前は一般タクシー会社での勤務経験は一切無くて。
当然ながら流しの営業も、駅前ロータリー・イベント会場周辺道路での客待ち営業も、福沢諭吉をぶん回していた肩パッド厚いスーツ着用のギラつくビジネスパーソンや、ケバイ扇子片手の腰クネクネボディコン女子から呼び止められた経験も一切ございません。
ましてや初デビューのタクシー営業区域が、130万人規模程度の沖縄本島ですから、田端氏がタクシーを活用したであろう都心部(東京?大阪?愛知?)での営業区域と同一で語るのも無理があるような気がしてならないんですが、それでも、
道を覚えようとしないタクシードライバーにはプロ意識が欠如したナマケモノだと思っていますし、
機械の扱いに疎いから・メンドクサイからという自己主義でカーナビすらも扱えないタクシードライバーは批判されても当然だろ
とも思っています。
しかしながら、
所有からシェアリングという時代の流れと、自動運転普及に向けて動く自動車業界の動き、現実通貨から仮想通貨という実態のないおカネで儲けたなんだと世間が騒ぐ様を、駅前ロータリー客待ちエリアや空港ロビー客待ちレーンで眉間にしわを寄せながら新聞を読み込むタクシードライバーからすると
営業区域内の隅から隅まで把握してどんな顧客の輸送依頼にも万全を期す というモチベーションに繋がらない事は何となく想像できます。
バブル期のような溢れ出る顧客のニーズは現在ありませんし、バブル期にバリバリ稼いでいたドライバーも高齢化しており、昨今のブレーキとアクセルを踏み間違える事故多発により「高齢タクシードライバー」は最早ベテラン扱いではなく事故誘発潜在性を秘めた危険ドライバーとして白い目で見られているのです。
そのような空気を感じ取っているタクシードライバーは率先して能動的に運行ルート開拓に力を入れるとは考えにくいですね。
目指すは下田大気的なリサーチタクシードライバー
法人タクシー会社で無事故無違反10年を勤め上げた優良ドライバーに営業権が付与される個人タクシードライバーでさえも、リピーター便りの乗務ばっかりで運行ルート開拓や新設道路のリサーチを行わない方はいらっしゃいますし、
雇われた乗務員という立場にありながら、営業区域で効率的に乗客を輸送するにはどうすればいいかを考えぬいて情報収集・運行ルート開拓にもエネルギーを注ぎ込んだ直木賞作家・志茂田景樹さんの次男 タクシードライバーの下田大気さんは、一年目で年収800万近くを稼ぎ出した実績があったりと、
稼ぐドライバーは道を熟知して 稼げないドライバーは道が分からない
という事実は厳然としてあるわけなんです。
先日のホリエモンによる大阪のタクシー会社をこき下ろすツイートも、企業役員・田端氏の吐き捨てるような愛が感じられないツイートも、言葉の選定やツイート時の感情に任せた耳心地の悪い呟きに一寸の誤りもございませんが、
そこを改善すれば社会的地位の低い目で見られているタクシー運送業の価値が幾分向上するんじゃないか、とも感じるわけです。
にしても、ピンポイント輸送以外に集中時間を求めるなら専属運転手雇えよ 的ツイートは仰る通りですなと痛快でしたね(笑)